手軽に家庭菜園を楽しめるキットが人気を呼んでいる。畑や庭に恵まれないマンション住まいでも簡単で、業者は「まずは失敗の少ないもので味をしめて、家庭菜園のファンになってほしい」と、すそ野拡大を狙う。(草下健夫)
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記事本文の続き ◆本に実がなる?
春先から書店に並んでいるのは、講談社(東京都文京区)の『我が家でミニ野菜をつくる』シリーズ。3月末発売の第1弾「ミニトマト」(1500円)は赤々とした化粧箱の中にミニトマト「レジナ」の種、培養土3リットル、ビニールポット(簡易な植木鉢)、錠剤肥料が入っている。20ページほどの解説冊子が付いているが、育て方はイラスト入りでたった4ページ。説明通りにやり、水さえやれば栽培を始められる。
同社が「書店にお客さんを呼ぶイベントのような商品を」(宣伝担当者)と、サカタのタネ(横浜市都筑区)と共同開発。これまでに2万部を突破し、この種の商品としては人気商品に躍り出た。
「土のにおいがほかの書籍に移る心配があり、出版業界では土をセットするのはタブーだった」(同)が、パッケージを工夫して乗り切ったという。5月下旬には第2号「ベビーキャロット」を発売、こちらも好調な売れ行きだ。
◆かわいい小箱に
若い女性に照準を当てたのが「タキイ種苗」(京都市下京区)と全国約70店舗のインテリアショップ「Francfranc」(フランフラン)が企画した「Vege栽培キット」。ケーキを入れるようなかわいらしい小箱に、種と土、ビニールポットなどが入っている。
昨年6月に3千個を発売するや、1カ月足らずで完売。3月末には第2弾として小松菜「極楽天」、チンゲンサイ「長陽」など5種類を売り出した。
同社は「食の安全の問題や不況を背景に、野菜の自家栽培に関心が高まっている。失敗なく、1カ月ほどで収穫が楽しめる商品で初心者をバックアップしたい」(広報出版部)と説明する。
洗って繰り返し使える「ボラ土」をセットにしたのが、九州電力総合研究所生物資源研究センター(佐賀市)が5年前に開発したキット「楽らく菜園」。ボラ土は火山岩からでき、水はけや通気性に優れている。養分は液体肥料で賄う仕組みで、主にネットで販売されている。
同センターの大津敢視・副主幹研究員は「このセットをベランダで楽しんで、ぜひ本格的な栽培へとステップアップしてほしい」とアピールする。
■8割近くが「家庭菜園に関心」
タキイ種苗が昨年8月に全国の成人600人(農業関連従事者を除く)に行った調査によると、家庭菜園に関心がある人は「庭や畑、市民農場などでやりたい」(33・3%)、「自宅ベランダや室内といったレベルなら」(46・3%)を合わせ、8割近くに上った。特に20代、30代の女性がそれぞれ90%、86・7%と高かった。
ベランダや室内での栽培に関心が高いのは、家庭菜園未経験者でも半数近くいた。調査では、全体的に1人暮らしや賃貸住宅、集合住宅に住む人の関心が高い傾向がみられたという。