打倒iPad ライバル猛追 タブレット型端末、覇権争い

米アップルの多機能情報端末「iPad(アイパッド)」など画面を触って操作する「タブレット型」と呼ばれる平板形状の電子端末をめぐる競争が一気に激化しそうだ。アイパッドは今年4月の発売後に品薄によって販売台数が事前予想を下回っていたが、供給体制を整えて反転攻勢に出る。これに対抗し、11月から12月にかけ韓国サムスン電子やシャープも投入する。富士通やNECなども参入準備を進める。アイパッドが切り開いたタブレット型端末の覇権争いが日本でも熱を帯びる。
 ◆弱点突くサムスン
 「ようやく生産体制を整えることができた。これで販売も爆発的に増える」
 今月18日、2010年7~9月期決算発表を受けて投資家と電話会見したアップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)は、アイパッドについてこう自信を示した。同時期のアイパッド販売台数は約420万台。投資家の間では「500万台近い」との見通しが多かったが、それを下回った。失望する投資家に対しジョブズCEOが供給不足の解消を宣言し、巻き返しを強調した。
 アイパッドの販売は日本でも停滞感が漂っている。市場調査会社のBCNによると、日本で販売を始めた5月の台数を100とすると、6月は145、7月は135、8月は105、そして9月は100となった。同社の森英二アナリストは「先行需要が一巡したため。年末にかけて市場が盛り上がり、利用できるコンテンツが広がればアイパッドにも再び火がつく」と分析する。
 ただ、年末に向けてはライバル機種投入が相次ぐ。サムスンはNTTドコモを通じて「ギャラクシータブ」を11月下旬に日本に投入する。基本ソフト(OS)に米グーグルの「アンドロイド」を採用。アイパッドよりも一回り以上小さい7インチの液晶モニターを搭載し、「思ったより重い」というアイパッドの“弱点”を突きたい考え。サムスンは「世界でも販売実績があり、日本でも強くアピールできる」(幹部)と自信をみせる。
 また、シャープは電子書籍に対応した多機能端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」を12月に発売する。発売と同時に新聞や雑誌、書籍など約3万冊を販売する電子書籍配信サービスを立ち上げ、11年早期に国内で100万台の販売を目指す。台湾のアスーステック・コンピューター(華碩電脳)も、電子書籍などに対応した端末を来年初めにも日本に投入することを決定した。このほかにも、NECや富士通、さらには東芝が欧州で先行販売している端末を日本に投入する可能性も高い。
 IT調査会社MM総研の中村成希アナリストは「タブレット型端末は年末から本格的な競争が始まる」と予想する。
 ◆新型で首位固め?
 これに対し、先行者のアップルは余裕の構え。ジョブズCEOは18日の電話会見で「現在出回っているタブレット型端末は発売した時点で“即死”している」と挑発した。実際、アイパッドの強さは圧倒的で、各種市場予測によると今年の世界のタブレット型端末市場は1950万台規模に達するとみられるが、そのうちアイパッドは7割程度の約1380万台を占める。
 アップルが独走に向けて“起爆剤”を仕掛けるとの観測も浮上している。機能を強化した新型モデルの投入だ。ITアナリストは「アップルはアイフォーンでも、新型モデル投入で販売台数を伸ばした。アイパッドでも新機種投入で販売に勢いを付ける」との見方だ。来年前半の市場投入が取りざたされる。
 タブレット型端末が入り乱れる中で、普及に向けた一つのポイントがコンテンツの充実度合いだ。アイパッドが約30万種に対し、ギャラクシータブなどで利用できるグーグルが提供するのは10万種弱だ。MM総研の中村氏は「コンテンツを楽しめるかが最大の差別化要素」と、この点で先行するアップルの優位は当面揺るがないとみる。
 ただ、グーグルが昨年に数千種だったコンテンツを猛烈な勢いで増やしているほか、シャープやサムスンなどは電子書籍など自前のコンテンツを増やす方針を示している。新規参入組は自前の努力でキラーコンテンツを充実させられるかが勝負の鍵を握りそうだ。(三塚聖平)

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