抗ウイルス薬「レムデシビル」 回復を31%早める効果

【AFP=時事】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療において、抗ウイルス薬「レムデシビル」に患者の回復を早める効果があることが、米国で実施された大規模な臨床試験で示された。レムデシビルは、同感染症に対する治療効果が証明された最初の薬となった。

 知っておくべき事柄を以下にまとめた。

■レムデシビルとは何か

 レムデシビルは米製薬企業ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)が製造する試験的な広域スペクトル抗ウイルス薬で、元々はエボラ出血熱の治療薬として開発された。

 米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は2月、新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」に対するレムデシビルの有用性を調査すると発表した。レムデシビルは、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの他のコロナウイルスに対して有望であることが動物実験で示されていた。

■効果は

 NIAIDは先月29日、1000人以上が参加した臨床試験の結果を発表した。これによると、呼吸困難を訴える新型コロナ感染症患者の回復が、プラセボを投与された患者よりも早かったとされる。正確には、レムデシビルを投与された患者の回復が、そうでない患者より31%早かったのだ。

 同研究所のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長は先月30日、NBCニュース(NBC News)の取材で、「試験結果は統計的に有意ではあった。ただ、目を見張るようなものではなかった」と語っている。

 つまり、レムデシビルは効果的ではあるが、奇跡をもたらすような治療薬ではないということだ。

 試験では、レムデシビルにより死亡率が11.7%から8.0%に下がる可能性が示された。だがこのデータの信頼性は、カットオフ値が最適ではなかったことから、統計学的には低いとされている。

■結果が入り交じっているのはなぜか

 米主導の研究結果が発表されたのと同日、より小規模ではあるがレムデシビルについての別の研究結果が英医学誌ランセット(The Lancet)に発表された。この研究論文では、統計学的に有効性が示されなかったとの結果が記された。

 ランセットに掲載の研究で対象となったのは中国・武漢(Wuhan)の感染患者200人超だけで、しかも患者が十分に集まらなかったとの理由から研究は早期の中止を余儀なくされていた。

 英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medicine)の医療統計学専門家、スティーブン・エバンス(Stephen Evans)氏は、この小規模な研究について、「説得力のある結論を引き出すにはサンプル数が少なすぎる」と指摘している。

■いつ使えるようになるのか

 レムデシビルの投与は、臨床試験などを通じて、世界の国々ですでに行われている。米国では近く、食品医薬品局(FDA)によってレムデシビルの「緊急使用承認」が出され、公式の認可を前に、その使用がさらに拡大すると見られている。

 レムデシビルの製造は難しく、患者への投与も注射となるため、当初の供給については制限が設けらえるとの見方が根強くある。ただ、ギリアド・サイエンシズのダニエル・オデイ(Daniel O’Day)会長は先月29日夜、すでに投与量150万回分の準備がほぼ整っている公開状で明らかにしている。

 同社はさらに、吸入剤の開発についてもその可能性を探っているが、まだ詳細は明らかにされていない。

■どのように効くのか

 レムデシビルはウイルスを直接攻撃する薬に分類される。ウイルスのゲノムに入り込み、そこでウイルスの自己複製プロセスを中断させるのだ。

 ギリアドの医務責任者であるマーダッド・パーサー(Merdad Parsey)氏は先月30日、発症後の時間が短かい患者ほどレムデシビルに対する反応が良いと指摘しているが、その一方で重症患者にもある程度の効果があるようだとも述べている。

 これは新型コロナウイルスが、肺損傷につながる呼ばれる異常な免疫反応「サイトカインストーム」を引き起こすためだ。これについてパーサー氏は、「ウイルスの複製を制限することで、炎症が抑えられ、肺損傷の患者数を減らすことができ、患者らから人工呼吸器をはずすのを早めることができる」と説明している。

【翻訳編集】AFPBB News

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