東京電力福島第1原発事故によって宮城県内で発生した指定廃棄物(放射性セシウム1キログラム当たり8000ベクレル超)の最終処分場に関し、環境省は20日、建設候補地として、栗原市、大和町、加美町の国有地を正式に提示した。今後数カ月かけて地盤や地質を詳しく調査し、最終候補地を1カ所に絞り込む。候補地周辺で風評被害への懸念が強まるのは必至で、地元の理解を得られるかどうかが焦点になる。
環境省は県と35市町村の首長らの会議を仙台市で開き、選定経過を説明した。栗原市の候補地は市北西部の深山嶽地区で面積24.4ヘクタール、大和町は町北部の下原地区で9.3ヘクタール、加美町は町西部の田代岳地区で7.9ヘクタール。いずれも山間部で最も近い集落でも2キロ以上離れている。
国が最終処分場の建設を目指す宮城、茨城、群馬、栃木、千葉5県で候補地を提示するのは自公政権になって初めて。
同省によると、候補地は地滑りなど自然災害の恐れがある地域や、年間客数50万人以上の観光地周辺などを除いた国有地と県有地から検討。必要面積2.5ヘクタールを確保できる17カ所を抽出した。集落や水源との距離、自然植生の少なさなどを評価して3カ所を選んだ。
井上信治環境副大臣は会議後、「候補地の自治体には大きな負担となるが、詳細調査に向けて住民の理解を得られるよう最大限努力したい」と述べた。建設地となる自治体に対しては地域振興策を打ち出す方針も表明し、道路整備や公共施設整備などを示した。
3市町長からは反発の声が上がった。猪股洋文加美町長は「机上の議論と実情は異なる。地域特性を踏まえないままでは前に進まない。このままでは町として協力はできない」と述べた。
井上副大臣は21日、村井嘉浩知事とともに3市町を訪問し協力を求める。村井知事は「どこに建設する場合でも、住民から大きな反対の声が出るのは当然だ。理解を得られるよう県としても努力する」と述べた。