平成27年度にも実用化される第4世代(4G)携帯電話用の周波数割当で初めて実施されることが決まった電波オークション(競売による周波数割当先選定)に対して、携帯電話事業者が警戒感を強めている。
オークションは総務省が26年度に実施する見通しだが、数千億円規模に膨らむとみられる落札額の負担は大きく、各社とも今後の制度設計の行方を注視している。
落札額が膨らむ可能性について、ソフトバンクモバイルの孫正義社長は「周波数をもらって事業を拡大するチャレンジャーに相当な負荷がかかる」と指摘。イー・アクセスも「新規参入が困難になり、事業者間格差も拡大する」と懸念し、新規・中小事業者だけの入札枠設定を求めている。
オークション導入に向けては、総務省の「周波数オークションに関する懇談会」が年末にも最終報告書をまとめ、同省が来年1月召集の通常国会にも関連法改正案を提出する。
■なぜ導入する? 選定の不透明さ排除/政府の収入増
Q なぜ、電波オークションを導入するのか
A 従来は電波を企業に割り当てる際に、総務省が事業計画などを審査して選んでいたが、時間がかかるうえ、選定過程の不透明さが指摘されていた。金額の多少を選定基準にすることで批判の多い「裁量行政」の余地がなくなる。オークション収入が政府の財源に使える点も期待できる。
Q オークションのお金はどう使われるのか
A 財源以外に、電波再編時の移行費用や情報通信技術振興など電波利用者への還元が検討されている。具体的な振り分け方法はこれから議論する。
Q 落札額はどれくらいなのか
A 米国が2008年に実施した例では5社の落札総額が約4兆円、ドイツが10年に実施した例は4社で約5千億円だった。かつては落札した企業が巨額支払いの影響で撤退したケースも出るなど問題が浮上。各国が制度を改良している。
Q 落札のために数千億円もかかるとしたら、携帯電話料金の値上げにつながらないか
A 携帯電話事業者は利用者料金の値上げ懸念をほのめかしているが、有識者による検討会がオークション導入国と未導入国の料金を比較したところほぼ同水準だった。経済学者も「過去の投資」は競争状態にある料金には反映しないとみている。
Q 消費者のメリットは
A 数カ月から1年もかかっていた事業者選定の期間が数日から1カ月程度に短縮されるので、新しいサービスを早く利用できる。多額の投資を回収するため、事業者は割り当てられた電波を効率的に利用しようと他事業者に周波数の一部を貸し出す。そうなれば新規参入が増えて、サービス改善の競争が進む可能性がある。
Q 外国の企業が日本の電波を買いあさる心配はないか
A 日本の制度ではNTTへの出資以外に外資規制はないため、外国の通信事業者がオークションに参入する可能性はある。ただ、オークションの前に基本的な事業計画の申請を求め、不法行為や計画と著しく異なる事業を行えば内外問わず免許取り消しの可能性もある。安全保障面など重大な問題がある場合は外為法(外国為替及び外国貿易法)による措置で対応できる。