携帯契約の「踏み台」行為増加 ポイント目当てに短期間で乗り換え 各社対応難しく

携帯電話の回線契約を行った際に受け取れるポイントなどの特典を目当てに、短期間だけ契約して他社への乗り換えを繰り返す「踏み台」行為に携帯各社が頭を悩ませている。競争激化で各社が契約時の特典を強化していることや、オンラインでの手軽な契約手続きが浸透したことが背景にある。ただ、携帯の契約を巡っては行き過ぎた契約者の囲い込みを総務省が是正してきた経緯もあり、業界全体で対策の検討が求められそうだ。 【グラフでみる】通信会社に支払っている平均月額料金 ■解約率上昇 「本当に大事にしたいユーザーの利益を消化している。何か手を打ちたいなと思っている」 ソフトバンク宮川潤一社長は今月6日の記者会見でこう語り、通話やデータ通信に必要な「SIM」のみを契約し、特典を目当てに短期間で乗り換えを繰り返すユーザーを問題視した。KDDIの高橋誠社長も2日の記者会見で同様の言及を行うなど、踏み台行為は業界全体の課題として認識されている。 実際に令和6年4~6月期の回線の解約率で、ソフトバンクは1・39%(前年同期は1・05%)と悪化。KDDIとNTTドコモも解約率が上昇した。 ■踏み台の理由 携帯業界では令和2年に楽天モバイルが参入して以降、顧客獲得競争が激化し、各社とも契約時の特典を充実させてきた。現在はSIMのみでも契約するだけで1万円分を超えるようなポイントがもらえるケースも珍しくなくなっている。 また、昨年12月に携帯端末の割引上限を原則4万円(税抜き)とする規制が適用されたことで、端末を安値で購入し転売することが困難になった。こうした理由もあり、携帯契約を通じて〝利益〟を得ようとする人がSIMのみを契約し、短期間で乗り換え続けるケースが相次いでいる。 もっとも踏み台行為を行うユーザーは全体から見れば少数で、各社の業績に影響を与えるほどではない。ただ、特典を巡る競争の激化は続き、今後さらに増加する可能性もある。 ■対策は 総務省もこうした問題を把握し、昨年12月には携帯事業者などへ向けたガイドラインを改定。踏み台行為を防ぐ措置を講じないまま契約を優遇することは、業務改善命令の対象になるとした。 一方で総務省はこれまで「2年縛り」に代表される携帯各社の過度な囲い込みを是正してきた経緯があり、短期解約を規制することはこれと逆行する。改定したガイドラインは「過去に短期間で解約したことがあることのみを理由に」携帯事業者が契約申し込みを拒否することも業務改善命令の対象とするなど、対応の難しさが浮き彫りになっている。

契約時の特典を減らしたり無くしたりするにしても、1社が単独で行えば競争で不利な立場になる恐れもあり、各社の足並みをそろえる必要がある。MM総研の横田英明副所長は「多少の新規契約者がいなくなっても、今いるユーザーにとどまってもらうための策を優先する考え方も必要だ」と指摘する。(根本和哉、飛松馨)

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