原子レベルで物質の構造を解析できる大型放射光施設の東北への誘致実現に向け、6県や各県の経済団体、大学でつくる支援組織が7月にも発足することが18日、分かった。東北の産学官が一体となって国に建設を働き掛ける体制を構築するとともに、医薬品や金属素材、バイオテクノロジーの研究開発など産業創出の可能性を検証する。
関係者によると、組織名は「東北放射光施設推進協議会」(仮称)。各県と7国立大、東北経済連合会など14経済団体の参加を見込む。村井嘉浩宮城県知事、里見進東北大総長、高橋宏明東北経済連合会長が共同代表に就く見通し。
6県は連携し、シンポジウム開催などの啓発活動を展開。宮城県産業技術総合センター(仙台市)など各県の試験研究機関を中心に、活用策や産業界のニーズを検討する。趣旨に賛同する一般企業や個人の「サポーター」も募っていく。
東北への大型放射光施設誘致をめぐっては、7国立大が2012年に東北放射光施設推進会議を組織し、直径100メートルのリング型施設建設構想を発表した。
建設費は約300億円を見込む。建設から運用まで10年間の経済波及効果は約3200億円で、約1万4000人の雇用が生まれると試算した。
大学による推進会議が学術面の効用を重視しているのに対し、新たに発足する協議会は、最先端の研究で得られた成果の応用による医療分野や自動車関連産業分野への波及効果を探っていく。
東北では宮城県松島、大郷、丸森各町が施設誘致に乗り出している。協議会はこうした個別の活動とは一線を画し、広く東北への誘致実現を国に働き掛ける方針。
[大型放射光施設] リング型や線型の加速器に電子を入れ、磁場の力で電子を曲げた際に発生する放射光を利用して原子、分子レベルで物質構造を解析する。新薬や蓄電池の開発など幅広い分野への応用が期待される。広大な設備や敷地が必要で「巨大な顕微鏡」と例えられる。国内は兵庫県などで9施設が稼働。東北は空白域となっている。