フリーマーケットアプリ大手の「メルカリ」で、含まれている放射性物質が国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超える山菜のコシアブラが売買され、食品衛生法違反の疑いがあるとして福島市保健所が出品者に自主回収を指導したことが分かった。ネット市場で売買される農産物は監視が難しく、基準値超えは「氷山の一角」との指摘もある。
基準値を超えていたのは米沢市産のコシアブラ。福島市などによると、250ベクレルの放射性セシウムが検出された。福島市在住の人が5月16日に採取してメルカリに出品、取引された。
同じ出品者が同8日に米沢市内で採取したコシアブラからも参考値ながら最大150ベクレルが検出された。福島市は同22日、この出品者に対し、販売した計16パック(300グラム入り)の自主回収を指導した。
これとは別に同4日、オークションサイト「ヤフオク!」に出品された宮城県産コシアブラからも参考値で最大160ベクレルの放射性セシウムが検出された。ヤフオク!は出品者が匿名のため特定できず、市保健所が運営会社を通して調査している。
認定NPO法人「ふくしま30年プロジェクト」(福島市)の通報で判明。NPO法人は4月中旬からメルカリなどで調達した山形や新潟、長野など6県産のコシアブラを調べ、複数検体から基準値超えが見つかっている。
コシアブラは放射性物質が吸着しやすく、東京電力福島第1原発事故で被災した福島県内59市町村の大半で出荷制限が続く。同県以外は規制が緩く、宮城県は大崎、栗原、七ケ宿など7市町が出荷制限、山形県は最上町だけが出荷自粛している。
メルカリは「出品者と購入者には既に案内した。保健所からは直ちに健康被害などにつながる可能性は低いと聞いている」と文書でコメント。今後の対応については「ユーザー保護の観点からガイドラインの改定や見直しを随時行う」と回答した。
NPO法人の阿部浩美副理事長は「ネットによる売買は実態が見えづらく、基準値超えのコシアブラはかなりの量が流通しているとみられる。国はネットで取引される山菜の抽出調査を行うなど実態把握に努める必要がある」と指摘する。