政府は2021年度から、全国で約26万人の高齢者らが暮らす見守りサービス付きの高齢者住宅に対する監視を強化する方針を固めた。突然の廃業などで高齢者が住まいを失うケースが相次いでいるためだ。全施設に入居・退去者数や退去理由などの公開を義務付けるほか、自社の介護サービスのみを過剰に使わせるために家賃を安く抑える可能性が高い施設を補助金の対象から外す方向で検討している。 【動画】高齢者の転倒事故はこうして起きる 政府が監視を強めるのは、高齢者住まい法に基づき11年度に制度化された民間賃貸住宅「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)。部屋の広さや職員による安否確認の実施などの条件を満たせば、都道府県などに登録される。 1戸あたり90万~180万円の整備費補助や、固定資産税の減額などの支援を受けられ、20年11月現在で全国に7735施設ある。当初は比較的健康な高齢者向けの住まいとしてスタートしたが、手厚い介護を受けられる特別養護老人ホームに入れない人が増え、それに代わる施設として使われることが多くなった。 一方、入居者を確保できずに経営が悪化する施設も増えている。19年度は倒産や廃業が過去最多の53施設にのぼり、入居者が転居を強いられることもあった。 このため退去者が多く、経営が安定していない施設を利用者が見分けられるよう、全施設に入居・退去者数や退去理由などの情報公開を求めることにした。国土交通省令を改正して規定を追加する方針だ。