政府、7都府県からの流入阻止 全国に緊急事態宣言、安倍首相押し切る

政府が16日、新型コロナウイルスの感染防止に向けた「緊急事態宣言」を全国に拡大したのは、大型連休を前に感染が広がる大都市からの人の流れを止める狙いがある。

 経済への打撃を懸念し、政権内には根強い慎重論もあったが、安倍晋三首相が押し切った。折しも同じ日に、政府・与党では現金給付をめぐる混乱が露呈。唐突な決定には政権の混乱ぶりを薄める思惑も見え隠れする。

 「国難とも言うべき事態を乗り越えるため、日本全体が一丸となって取り組んでいくしかない」。首相は16日夜の政府対策本部でこう述べ、全国への緊急事態宣言拡大に理解を求めた。

 政府は緊急事態宣言に当たり、累計感染者数、感染者数が倍に増える時間、感染経路が不明な人数などを分析の目安としている。

 政府関係者によると、緊急事態宣言の拡大地域はこの目安を元に愛知県、岐阜県などを対象に、14日にも発令する運びだったが、新規の感染増加が想定を下回ったため、いったん見合わせた。

 しかし、累計感染者の増加による「医療崩壊」の可能性が各地で叫ばれ始め、各自治体が独自に緊急事態を宣言する動きも続出。3月下旬の3連休で警戒が緩み感染が急拡大したことを踏まえ、今月下旬からの大型連休に向けた対応が迫られていた。

 急きょ、16日午前から首相官邸と感染症の専門家による調整が本格化。宣言に伴う地方経済への影響を懸念し、対象を北海道や京都府などに絞り、17日に発令する案も一時検討されたが、首相の意向で16日中の全国発令が決定。同日夕開かれた諮問委員会には関連資料がそろわず、急な政治決断だった様子がうかがえた。

 一方、事態が急展開した16日は、政府が当初まとめた収入減世帯限定の現金給付案が公明党の反発で頓挫。異例の補正予算案組み替えに追い込まれた。自民党幹部は緊急事態宣言の全国拡大を引き合いにし、「理屈づけにはもってこい。災い転じて福となすだ」と指摘。宣言拡大を大義名分に、10万円の現金給付を進める考えを示した。 

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