(ブルームバーグ): 日本銀行は31日の金融政策決定会合で、現行の政策金利を維持することを決めた。海外経済や金融市場の動向が国内経済・物価に与える影響を見極めることを明記した。
会合では、無担保コール翌日物金利が0.25%程度で推移するように促す金融市場調節方針を据え置くことを全員一致で決定した。政策金利の維持は9月に続いて2会合連続となる。
新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の上昇率見通しは、2025年度を前回の2.1%から1.9%に下方修正したものの、26年度まで2%程度で推移するとの従来の想定から大きな変化はなかった。今後の政策展開を探る上で注目されたリスクバランスは、前回リポートで指摘した「上振れリスクの方が大きい」との表現を24年度はなくす一方、25年度は維持した。
金融政策運営は、経済・物価見通しが実現していけば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」方針を据え置いた。その上で、米国をはじめとする海外経済や市場動向を十分注視し、「わが国の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極める必要がある」とした。
植田和男日銀総裁は会合後の記者会見で、8月以降、弱い米雇用統計などを背景に市場が急変し、日本経済への重要なリスクと判断したことから「政策判断に時間的余裕がある」との表現を使ったと説明。足元、米経済のリスク度合いは少しずつ下がってきているとし、同様の表現は「不要になるのではないかと考え、今日も使っていない」と語った。
金融政策の「見極めに必要な時間や利上げのタイミングについて予断を持っていない」とした上で、「今後毎回の決定会合において、その時点で利用可能な各種のデータ情報から経済物価の現状評価や見通しをアップデートしながら政策判断を行っていく」との考えも示した。
円が上げ幅拡大
市場では円相場が対ドルで1ドル=152円台前半まで上昇。日本銀行は予想通り金融政策を維持したが、来年度物価の上振れリスクの記述を維持して円買いにつながった。総裁発言を受け、上げ幅をさらに拡大した。
衆院選での与党の過半数割れによる政局混迷や円安の再進行に加え、米大統領選も来月5日に控えており、日銀の政策スタンスに注目が集まっていた。展望リポートの内容からは政策正常化路線が維持された一方で、海外経済と市場動向への警戒感も示された形だ。
野村証券の岡崎康平チーフマーケットエコノミストは、25年度のコアCPIが若干下方修正されて見方がやや慎重になっており、「全体的にハト派な見方に変わった印象を与える」と説明。ただ、政策効果や足元の原材料価格の低下などもあるため、基調的な物価は変わっておらず、「日銀のシナリオに沿った動きだと理解してよい」と述べた。
ブルームバーグが17-22日にエコノミスト53人を対象に実施した調査では、政策変更を予想したのは1人だけだった。次回の利上げ時期の予想は12月が53%、来年1月が32%となっており、両会合で85%を占めた。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは、日銀としては「全体的には今後正常化を進めていくのにオントラック(順調)だという説明になると思う」と指摘。海外経済の不透明性から利上げを見送ったとの見方を示した上で、「円安がさらに進めば、12月にも利上げをするだろうし、今回の展望リポートはその可能性を否定するものではなかった」と述べた。
今回の会合には赤沢亮正経済財政担当相が就任後、初めて出席した。従来は財務副大臣として1月以降の会合に毎回出席していた。
–取材協力:氏兼敬子、野原良明.
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