教授や俳優、僧侶まで… 独立役員、多彩な顔ぶれへ 

京都、滋賀の上場企業で社外取締役の人選が多様化している。6月下旬に株主総会を開く3月期決算の企業が発表した「独立役員」の候補者には、俳優や大学教授ら企業人以外の顔ぶれも目立つ。幅広い見識を経営や監査に反映させるのが狙いだ。一方で、取締役会に出席する負担を考慮し、近隣企業の役員を選ぶ事例も少なくない。
フェイスは29日の株主総会で、客観的な立場から経営を監督する独立社外取締役に、俳優の別所哲也さんを選任する人事案を提出する。別所さんは短編映画を集めた米アカデミー賞公認の映画祭の代表のほか、公的な役職も数多く務める。
国内最古のレコード会社、日本コロムビア(東京都)を傘下に持つフェイスは、音楽コンテンツの配信サービスに注力している。「別所さんはエンターテインメント業界に精通している。音楽ビジネスに対する助言や提言をいただきたい」(グループ経営企画室)と期待する。
学識者や専門家の招へいも盛んだ。京都銀行は女性初の取締役候補として原価計算や会計を専門とする滋賀大経済学部の小田切純子教授を、フジテックも経済企画庁(現内閣府)出身で経済政策を研究する立命館大経済学部の杉田伸樹教授を、それぞれ指名した。
経済分野以外の人材活用も広がる。ワコールホールディングス(HD)では、俳人の黛まどかさんが15年から独立社外取締役を務めている。堀場製作所は昨年、「倫理的な助言を生かす」として、天台宗の門跡寺院である青蓮院(京都市東山区)の東伏見慈晃門主を迎えた。
異業種の経営者を社外取締役に据える企業が多い中で、ユニークな人選をしたのはオムロンだ。新任の社外取締役候補の上釜健宏氏は電子部品大手TDKの会長。同社とオムロンは製品が一部重なるが、技術やグローバル経営に明るい上釜氏の手腕を評価した。「主要事業は競合しない。個人の経験や専門性を重視した」(コーポレートコミュニケーション部)という。
一方、近隣の上場企業トップや元役員を独立社外取締役候補に選ぶケースも多い。
ワコールHDは、トーセの齋藤茂会長兼CEOを候補として発表。齋藤氏はSCREENHDの社外取締役も13年から務める。ワコールHDは「齋藤氏の豊かな知見や視点を生かす狙い。本社が同じ京都市内で取締役会に出席してもらいやすい点もある」。ジーエス・ユアサコーポレーションや京福電気鉄道も、近くに本社を置く上場企業の取締役経験者を新任する方針だ。
コーポレートガバナンス(企業統治)に詳しい京都大経済研究所の小佐野広教授は「お互いによく知る間柄ならば、社外取締役から経営判断の助言を得やすい」と利点を挙げる一方、「取締役がなれ合いの関係になり、経営監督という企業統治の根本がおろそかになる恐れもある」と課題も指摘している。
■独立役員
一般株主と利益相反が生じる恐れがない社外取締役や社外監査役を指す。子会社役員や主要取引先の幹部、近親者などは独立性がないと見なされる。東証は2015年施行のコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)で、東証1、2部上場の企業に2人以上の独立社外取締役を選任するよう求めた。東証によると、2人以上の独立社外取締役を選任した1部上場企業は昨年7月で79.7%。

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