教育費が家計にずしり…国に根強く残る「家庭頼み」の予算措置と認識に、若者は将来への不安を拭えず

 27日投開票の衆院選に合わせ、鹿児島県内で浮き彫りとなっている課題について現状を探るとともに、県内4選挙区に立候補した12人の考えを聞いた。(衆院選かごしま・連載「論点を問う」⑧より)  鳩山由紀夫・元首相が街頭演説「米トマホークは低速で時代遅れ」 防衛費の見直し迫り、教育予算への充当訴え

「この問題の解き方を教えて」「入試に出るよ」。鹿児島市の一軒家で週3回、無料で夜開かれる「鹿児島つばめ学習塾」。中学生に教えるのはボランティアの講師たちだ。鹿児島大の学生が中心となっている。  理学部1年の男子学生(19)もその1人。教員に憧れ、講師を引き受けた。実家は宮崎県。親の仕送りはもらわず、給付型と貸与型の奨学金を月に計8万円受け取る。週3日のアルバイトもこなし、学費と一人暮らしの生活費を工面する。  最近、東大の授業料値上げに気をもむ。「続く国立大も出てきそう。下げてほしいくらいなのに、上がるときつい」と切実だ。「海外には大学が無償の国もあるが、日本は金銭的な理由で学びを諦める人もいる。国としてどうなんだろう」と疑問が拭えない。 ■ ■ ■  高校入学から大学卒業まで、子ども1人にかかる教育費用は平均942万円-。日本政策金融公庫の2021年度調査からは、教育費を捻出するため、支出を削り預貯金を取り崩すなど、家計に負担が重くのしかかっていることがうかがえる。加えて地方は都市部に比べて大学そのものが少ない。自宅外通学者への仕送りは年平均95万円に上る。

 経済協力開発機構(OECD)が9月に公表した報告書によると、公的支出に教育費が占める割合は、加盟36カ国の平均12%に対し日本は8%で下から3番目。大学などの高等教育の費用は半分を家庭で負担しており、加盟国平均の19%との差は歴然だ。それどころか国が大学に支給する運営費交付金は縮小が続く。  立教大学の中澤渉教授(教育社会学)は「日本は近代教育制度が始まった当初から、国の予算を教育に回す土壌がなかった。特に高等教育費は、現在も『家庭が負担するもの』という認識が根強い」と指摘する。  進路の選択を増やし、キャリアを形成していく上で、大学へのニーズは高まっている。大学・短大への進学率は年々上がっており、全国平均は04年度の45.3%から23年度には61.1%と5割を超える。一方、鹿児島は46.4%止まりだ。  子育て支援として、さまざまな教育費の「無償化」を公約に掲げる政党が目立つが、財源をどう捻出するのかは見通せない。中澤教授は「国が予算を充てるようにするには、教育に対する国民の関心を高める必要がある」と語る。

 義務教育段階でも塾や習い事など、さまざまな費用がかさむ。経済状況が厳しい家庭に学用品代や給食費を補助する就学援助の対象となっている小中学生は、鹿児島県は22年度、全国で3番目に高い22%に上った。  つばめ学習塾には、ひとり親世帯などで、経済的に有料の塾は難しい生徒たちも通う。「高校や大学の学費が安くなれば家計が助かる」「家庭環境やお金が理由で、人生の選択肢を左右されないようにしてほしい」。まだ投票権がない中学生も、教育関連の公約に関心を示す。  奨学金の返済は、働きながら子育てができるのか-。ボランティア講師を務める男子学生も、将来への不安が消えない。「国はもっと若者にお金を使ってほしい」と望む。

南日本新聞 | 鹿児島

タイトルとURLをコピーしました