Q 文大統領のこだわる朝鮮戦争「終戦宣言」…でもそれで何が変わるの?
韓国・文在寅政権の任期が残り半年になり、アメリカと韓国の間で北朝鮮をめぐる協議の回数が急増しているとニュースで知りました。朝鮮戦争の「終戦宣言」をレガシーにしたい文政権の思惑があり、日本は宣言に対して反対の姿勢を示していると解説されていました。
たしかに、ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対して「終戦宣言」を行うのは違和感があるのですが、「休戦状態」が70年近くも続いている状況で、わざわざ宣言を行う意味もあまり見出せません。実際に宣言が行われたら、一体何が変わるのでしょうか?(50代・女性・無職)
2018年南北首脳会談での金正恩(左)と文在寅 ©AFLO
A こんな人たちの「必要」がなくなります
「終戦宣言」をしたら、韓国に米軍が駐留する大義名分がなくなる可能性があるということです。
韓国に駐留する米軍は、朝鮮戦争勃発の際に国連決議で誕生した国連軍という建前です。朝鮮戦争が終わっていないのですから、国連軍が韓国に駐留しているのです。
もし終戦宣言をすれば、「戦争が終わったのだから朝鮮国連軍は解散し、米軍は韓国から出て行くべきだ」という世論が高まるでしょう。文在寅大統領は、それを狙っているのでしょう。
朝鮮国連軍の司令部は、かつて東京に置かれたこともあります。朝鮮半島全体が戦場になっていたからです。現在はソウルに移転しましたが、東京の横田基地に「朝鮮国連軍後方司令部」が存在します。もし朝鮮戦争が再発し、ソウルが戦場になれば、国連軍司令部が機能しなくなるかも知れません。それに備えて、東京に後方司令部があるのです。
また、国連軍に軍隊を送っているオーストラリアやイギリス、カナダ、フランスなど9か国の駐在武官が、朝鮮国連軍連絡将校として東京の各国大使館に常駐しています。
終戦宣言がなされたら、この人たちの存在も必要なくなるということになります。
これでは朝鮮半島や日本の安全保障に支障が出る、というわけです。
(池上 彰)