国民生活や飲食店などの経営状態はコロナショックからの回復にはほど遠いが、そのさなかに「わずか1日で100万円」の文書通信交通滞在費(文通費)が支給された初当選組(元職も)の国会議員への特権的待遇が批判を浴びている。
それだけではない。地方議員の“無駄な”歳費やコロナの失策で消えた金、東京五輪での赤字を換算すると、国民一人当たり3万円近い負担を強いられていたことになる──。
衆参の国会議員全員の歳費(給料)が総選挙後の11月分から月額約26万円も増額された。感染拡大が始まった昨年4月に「国会も国民と気持ちを一緒にするのが大事だ」(森山裕・自民党国対委員長=当時)と実施していた歳費2割カットを、選挙が終わると“もう国民と気持ちを一緒にしなくてもいい”とばかりに解除したからだ。
国会議員の恵まれた生活を保障するためにどれだけの税金が使われているかを知ると驚く。
まず国会議員の歳費はボーナスを合わせて年間約2200万円と世界的にも最高水準とされる。それに「第2の給料」と呼ばれる前述の「文通費」が支給される。この文通費は議員個人の口座に歳費の金額に毎月100万円上乗せして振り込まれる。給料名目ではないから非課税で、使途の報告もいらない“つかみ金”だ。
議員にとってとくにおいしいのが非課税特権だ。ベテラン秘書が言う。
「国会議員は歳費だけで所得税率40%の水準に届くから、他の収入があってもその分は所得税・住民税合計で50%課税される。しかし、文通費は非課税だから年1200万円が丸々手取りになる。これを給料と見れば課税所得2400万円分に相当します」
歳費と文通費を合わせると、国会議員には実質的に年間約4600万円の給料が支払われているという指摘だ。
議員たちは文通費を丸ごとポケットマネーとして使える。同様に、“お手盛り”で数々の特権を編み出してきた。
選挙区と国会(東京)の移動にかかる「交通費」は国から無料で新幹線・グリーン車乗り放題のJRパスや航空機の無料チケットを支給させた。国がJRや航空会社に支払う費用は議員1人平均年間約200万円だ。また、議院派遣の国会議員の海外視察も渡航費用は全額税金で賄われる。
東京への「滞在費」もタダ同然だ。国会議員には衆参の議院会館に約100平米の事務所が無料で与えられ、会館の光熱費や備品代、電話代も国費負担。東京・赤坂の豪華な議員宿舎は3LDK(約82平米)で家賃は月約14万円。周囲の同程度のマンションの家賃相場と比べると4分の1程度の格安で提供させている。いずれも、国会議員が法律を通して決めた役得だ。岩井奉信・日本大学大学院講師(政治学)が指摘する。
「文通費の支給が始まったのは戦後間もない1947年からで、当時は国会議員には官舎もなく、選挙区との往復も大変だった時代です。すでに役割を終えたにもかかわらず、議員は既得権として手放さず、金額も増えて第2の給料と化していった。廃止すべきだし、仮に残すとしても、実際にかかった費用を後精算するように改めるべきです」
国はこのほかにも、公設秘書3人分の給料、立法事務費などを負担しており、歳費や数々の議員特権の総額は年間約1051億円にのぼる。国会議員1人ざっと1億5000万円を国民は税金で負担させられている。