雑誌不況といわれる中、料理レシピや節約、収納法などを紹介する主婦向けの生活情報誌が元気だ。東日本大震災後、内向き志向が強まり、外出するより家の中での時間を大事にしたいという変化もうかがえる。
◆母から娘へ
節約重視の『すてきな奥さん』(主婦と生活社)や『おはよう奥さん』(学研パブリッシング)、エコ&スローライフ重視の『天然生活』(地球丸)、料理重視の『オレンジページ』(オレンジページ)や『レタスクラブ』(角川マガジンズ)、ファッション重視の『saita(サイタ)』(セブン&アイ出版)…。多くの雑誌が書店の店頭に並ぶ。
その中でも、今月創刊30周年を迎えた扶桑社(東京都港区)の『ESSE(エッセ)』は料理や収納、節約など家庭生活全般を扱う。発行部数は約53万部(日本雑誌協会調べ)で、主婦向け生活情報雑誌のトップクラスだ。
母親から娘への結婚祝いとして1年分をプレゼントするなど、母子2代の読者も多く、編集部の合川翔子さん(26)もその一人だ。愛知県豊橋市に住む母、悦子さん(52)は新婚当初からの愛読者でバックナンバーを大切に保存し、気に入った号は繰り返して読んだ。
「料理のページにいろいろ書き込んだり、自分なりに使いこんでいた。家事について何も知らなくても、読んでいるうちに知識が増えていたのだと思う」と翔子さん。
今月発売の11月号は、過去30年間に登場した、栗原はるみさんや有元葉子さんら著名な料理家のレシピの中から、読者投稿で「記憶に残ったレシピ」を紹介。来月発売の12月・1月合併号では、年末に合わせて「不要品を捨てる技術」やお菓子のレシピを特集する。
◆“理想”を発見
編集長の小林孝延(たかのぶ)さん(44)はエッセの魅力について、「インターネットでは読めない著名人の生活や料理レシピが充実。節約にしてもあまりギスギスせず、生活に余裕を感じられるところ」と分析する。
震災後には「こんな雑誌が役に立つのか」と無力感に襲われた。しかし、読者からの手紙などで元気づけられた。
『長い間ガスが止まりましたが、電子レンジだけを使ってする料理の特集が役に立ちました』(仙台市の読者)。『津波で家の中はグチャグチャになったけど、エッセを読んで前向きになれた。雑誌の中にあるように、明るくて楽しい家庭をまた作りたい』(沿岸部の読者)
小林さんは「被災者の皆さんの役に立てたと思うと、うれしくて涙が出た。読者は雑誌の中に自分の理想の家づくり、生活のヒントを見つける。これからも生活を豊かにする誌面を作り続けたい」と話す。
これからは、年末年始にむけて各雑誌とも特集や付録などに力を入れる。趣向に合った雑誌で、生活に潤いを見つけたい。