新入社員、デートと残業どっちを優先させるべきか?

新年度が始まった。新しい気持ちで自分の仕事や働き方を見つめ直すきっかけにしたいところだが、今週から新社会人として「通勤」しはじめた学生は特に、いろいろと考え、悩む日々が続くはず。たとえばこんなシチュエーション――。

金曜日の夜、ガールフレンドに電話して夕食に誘おうか、大学の友人と居酒屋でも行くかと思案していたところ、会社の上司や先輩が「一杯どうだい? お酒は飲めるんだろ?」の一言。上司も先輩も、どうやら親切心で声をかけてくれているらしいことは、よくわかる。「右も左もわからなくて不安だろうから、この会社で楽しく、そしてたくましく働いていく秘訣を教えてあげよう!」という気持ちは、とてもありがたい。しかし、せっかくの金曜日の夜。感じの悪い先輩のことや聞き慣れない言葉ばかりで戸惑う研修のことを、ガールフレンドや友人たちと語り合いたい――。

人生とは、3割の時間を使ってお金を稼ぎ、そのお金で食べて、寝て、遊んで、子育てをすること

このジレンマに、ライフネット生命の会長・出口治明さんは明解に答えてくれる。49歳で大企業を左遷され、60歳で保険会社を起業し、上場までこぎつけた異色の経営者であり、稀代の読書家としても知られる出口さんによれば……

「『デートと残業とどちらが大事なんだ』そんな言葉で上司に怒られたことのある人もいるでしょう。僕に言わせれば100%、デートに決まっています。比較するのもおこがましい」(『「働き方」の教科書』より、新潮文庫刊)
出口さんによれば、日本人の年間労働時間はおよそ2000時間だと言われているが、1年間は365日×24時間=8760時間であり、働いている時間は生きている時間の4分の1に過ぎない。サービス残業などを入れて大きく見積もっても3分の1を超えないはずだ。つまり「人生とは、3割の時間を使ってお金を稼ぎ、そのお金で食べて、寝て、遊んで、子育てをすること」(前掲書)であり、人生で何よりも大切なものは、人生の3分の2もの時間を一緒に過ごすパートナーであり、友人たちだというわけだ。

人生に占める仕事の時間は3割程度。だからこそ自由に、勇気をもって仕事をしよう――。 『「働き方」の教科書―人生と仕事とお金の基本―』[著]出口治明

この認識をあやまると、仕事が人生のすべてだと思い込むようになってしまう。上司や同僚の顔色を窺うようになったり、何かで失敗したときに、必要以上にふさぎこんでしまうことも。しかし3割にすぎないという心構えがあれば、「ここで失敗しても平気だ」と大胆な選択もできるはず。仕事は人生の3割にすぎないと割り切って、新年度を新鮮で大胆な気持ちで過ごしたいものだ。というわけで、冒頭のシチュエーションの正解は簡単。「デートを優先」、これだ。

デイリー新潮編集部

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