新卒」キープ 授業料減額など救済へ 東北の大学

 在学中に就職先が決まらない学生向けに支援制度を設ける動きが、東北の大学でも広がりつつある。今春卒業予定の大学生の就職内定率は、昨年12月1日現在で68.8%と過去最低。厳しい就職戦線を反映し、卒業時期を迎えながら、4月以降も就職に有利な「新卒」の身分を求める学生は少なくない。大学側は卒業延長制度や授業料減額制度を新設し、就職活動を側面から支える。
 石巻専修大(宮城県石巻市)は今春卒業予定の学生から、卒業単位を取得済みの学生でも希望すれば半年か1年の在学延長を認める。授業料は半額に減らし、年間で理工学部は約50万円、経営学部は約35万円になる。
 進路支援係は「就職活動の継続を目的とする学生の受け皿にしたい」と説明する。今のところ6人が延長を申し込んだ。
 学校法人光星学院(青森県八戸市)が運営する八戸大と八戸短大は今春から支援規定を導入。単位を残して卒業せずに就職活動を続ける学生の授業料は3分の1に減額する。
 学生が就職のため、意図的に留年するケースは以前からあった。首都圏では、不況で就職状況が急激に悪化した2009年度から、卒業延長を制度化する大学が目立ち始め、東北にも波及した形だ。
 東北工大(仙台市)は本年度、未就職の卒業生が「研究生」として在籍できる支援制度を新設した。通常は月5万7000円の授業料は、1年間限定で月1万円としている。
 初年度は64人が研究生となり、ほぼ半数が就職したという。11年度からは週1回の登校を義務付ける。沢田康次学長は「卒業時の研究を深めてもらい、就職活動だけで時間を費やすことも防げる」と力説する。
 学生が「既卒」を敬遠する背景には、採用試験での企業の新卒志向がある。政府は昨年、卒業から3年以内の既卒者も「新卒」として扱うよう経済界に要請したが、対象を広げる動きは一部企業にとどまっている。
 大学関係者の中には、卒業延長制度の効果に懐疑的な見方もある。ある大学の就職担当者は「なぜ卒業を延長したのか、学生が企業側に前向きな理由を説明するのは難しいだろう」と語る。
 山形県内のIT企業の採用担当者は「就職が決まらなければ留年すればいいという、学生の逃げ道になりかねない」と指摘。大学のキャリア教育が進まない現状を踏まえ、「1、2年のときに就職観をしっかり持たせる教育に力を入れるべきだ」と助言している。

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