新型コロナウイルス(COVID─19)の新規感染者が中国本土で増加し、韓国やイラン、イタリアでも感染が拡大する中、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は21日、新型ウイルスの世界的な感染拡大の封じ込めに向けた「絶好の機会」が狭まっていると警鐘を鳴らした。
中国当局は過去24時間で、新たに892人の感染を確認。死者は118人。現時点で中国本土で確認されている感染者は累計7万5567人、死者は2239人。
当局はこの日、発生源とされる湖北省以外の国内2カ所の刑務所で新型ウイルスがまん延し、計234人が感染したと発表。湖北省の刑務所でも271人の感染が確認された。
同省はまた、19日に確認された新規感染者数を当初発表の349人から775人に上方改定。感染の判断基準変更に伴い除外されていた症例を積み増すとした。
中国共産党の最高意思決定機関である党中央政治局は、新型ウイルスの感染拡大がまだピークに達していないとの見方を示した。
中国以外では、韓国で新たに100人超の新型コロナウイルスの感染が確認され、感染者は計204人に達した。
イラン保健当局は新型ウイルス感染で新たに2人が死亡したと発表。死者は計4人になった。新たに13人の感染も確認され、国内での感染者は18人に増えた。
レバノンでは初の感染が確認された。イランから到着した45歳の女性という。
イタリアでも新たに16人の感染が確認された。初めての国内感染例が含まれる。
テドロス事務局長は、感染拡大を封じ込められるという考えは変えていないとしながらも、「封じ込めに向けた絶好の機会は狭まっている。迅速に対応する必要がある」と警告。「状況はどの方向にも展開する可能性がある。うまく対応できれば深刻な危機は回避できるが、対応の機会を逸すれば深刻な問題に直面する」と述べた。
テドロス氏はイランでの感染拡大は「大きな懸念」と指摘。WHOの感染症専門家、シルビー・ブリアン氏も「異なる場所で、それぞれ異なる感染パターンが見られている」とし、感染形態は多様化しているとの認識を示した。
横浜に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染が確認された患者も630人を超えた。
一方、米疾病対策センター(CDC)は、退避した米国人329人中18人が陽性と診断されたと発表。幹部のナンシー・メソニエ氏は「米国ではまだ地域感染は確認されていないが、いずれそうした状況に陥る可能性は高い」とし、新型ウイルスまん延の可能性に備え、学校の閉鎖や企業の休業といった措置を講じることができるよう、今後数週間で用意を整えたいと述べた。