新型コロナ 感染しても無症状の子供から感染拡大の可能性

世界各地で新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、子供はウイルスに感染しても無症状だったり、重篤な症状が少ない傾向があることが中国の医療機関の調査などで明らかになった。このため、専門家の間では「ウイルス感染はしているが、症状が出ない子供がいることを念頭において、今後の対策を立てる必要がある」と指摘している。

 イギリスの『ニューイングランド医学ジャーナル』は3月号で中国湖北省武漢市でウイルスに感染した171人の子供のうち、全体の約16%に当たる27人が無症状であったり、すぐに症状がでなかったとする同市の医師グループの研究結果をまとめた論文を掲載した。また、他の12人もレントゲン検査などで肺炎の症状が示されたが、感染発症の症状は出なかったという。

 湖北省に次いで、中国で最も感染者数が多かった浙江省東部の小児36人の診察結果によると、全体の約28%に当たる10人は無症候性で、他の7人も軽度の上気道症状があるだけで、この全体の半数に当たる17人は生活するのにほとんど問題はなく、正常な状態とほぼ同じだったという。

 また、残りの半数の児童は症状としては中程度で、発熱と咳があったが、ほとんどが2週間の入院で回復しており、重症化する例はなかったという。

 周囲の大人はこれら無症状の子供と接するのに、マスクをするなどの警戒は行なかったことから、子供達からウイルス感染が拡大した可能性は否定できないという。

 論文のなかで、ある浙江省の研究機関の専門家は「明確な疫学的情報を持たない小児科医にとって、無症候性の小児の大部分がウイルス感染していると特定することは困難。これらの子供を媒介として、地域感染が危険な状況に発展していったのではないか」と分析している。

 同様に、カナダの専門家も「今後は伝染の連鎖における子供たちの役割に関するより多くの調査が必要だ。そのうえで、子供たちがウイルスを拡散する上で重要な役割を果たしていることが判明した場合、政府は感染を遅らせ、脆弱な人々を保護するために、子供たちの詳細な症状を分析して、大人の接触を控えるための対策を考慮に入れるべきだ」と指摘している。

 ただし1歳未満の乳児の重症化リスクが高いとする中国の研究グループの報告もあり、学齢期の子供とは分けて考える必要がありそうだ。

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