慶応大や京都大など国内の8研究機関で作る共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」は17日、日本人が新型コロナウイルスで重症化する遺伝子を特定したと発表した。免疫に関わる遺伝子で、配列の近くに特定の変異を持つと、65歳未満の患者では重症化リスクが約2倍高くなっていた。
研究チームは全国100以上の医療機関と連携し、昨年5月から新型コロナ患者の血液を採取。約2400人分についてゲノム(全遺伝情報)解析を行い、重症化に関係している遺伝子の特定を進めてきた。その結果、免疫の働きに関わる「DOCK2」と呼ばれる遺伝子が関わっていることを突き止めた。
DOCK2は免疫細胞の働きを制御するタンパク質。65歳未満の重症者440人と健常者2377人を比較したところ、DOCK2遺伝子の近くに特定の変異を持っていた場合、重症化リスクが約2倍高まっていることが分かったという。このタイプの変異は日本人の約20%が持つが、欧米人にはほぼないという。また、こうした数値の違いは、他の遺伝子では見つからなかった。
研究グループ代表の慶応大の金井隆典教授は「変異による機能の違いが(過剰な免疫反応を起こし重症化の原因となる)サイトカインストームの起こしやすさに関係しているのではないか」と指摘。「DOCK2がウイルス感染に中心的な役割を果たしていることが明らかになれば、創薬につなげられるかもしれない」と話す。
またゲノム解析では、65歳未満の場合、O型が最も重症化リスクが低く、O型と比べてAB型は約1・6倍、A型とB型は約1・2倍リスクが高かった。
研究グループが参加する国際共同研究では、欧米人を中心とした世界約4万6千人の患者を対象に重症化因子を調査しており、DOCK2とは別に約15の遺伝子を特定。グループによると、このうち約半数が日本人にも重症化のリスクがあるという。