新型コロナウイルスの感染が拡大し、流行「第11波」の様相を呈している。厚生労働省によると、新規感染者数は10週連続で増加し、感染力の強い変異株への置き換わりが進む。新型コロナ以外の感染症も広がっており、厚労省は手洗いなど基本的な感染対策を呼び掛けている。
同省によると、全国の定点医療機関から14日までの1週間に報告された新型コロナの新規感染者数は5万5072人。患者数は5月上旬から増加しており、鹿児島(31.75人)や佐賀(29.46人)など九州・沖縄を中心に感染が広がる。全国の定点当たりの新規入院者数も、約5カ月ぶりに3000人を超えた。
2020年1月に国内で初確認された新型コロナは冬のほか、人と人の接触機会が増え、冷房で換気がしにくくなる夏にも猛威を振るってきた。21年7月から始まった流行では、入院できず自宅で亡くなる人が続出。免疫を回避しやすいオミクロン株の「BA・5」が拡大した22年8月は、1日当たりの新規感染者数が過去最多の26万人を記録した。昨年は9月初旬に感染のピーク(20.50人)を迎えており、今年も同時期まで流行が続く可能性がある。
感染拡大の背景として指摘されるのが、オミクロン株の一系統「JN・1」から派生した「KP・3」の出現だ。国立感染症研究所によると、民間検査機関が5月27日〜6月23日に調べた感染者では、KP・3が最多の75%を占めた。東大医科学研究所は、KP・3は従来の変異株と比べ、ワクチン接種や自然感染で得られた免疫を回避する能力が高まっていると分析している。
厚労省は今月22日、全国の感染状況や医療提供体制について、専門家からヒアリングを実施。医療逼迫(ひっぱく)は現時点で生じていないものの、感染警戒の呼び掛けを求める声が上がった。
子どもが夏にかかりやすい手足口病が過去最多のペースで広がるなど、コロナ以外の感染症も流行している。同省は「高齢者や基礎疾患のある人が感染すれば重症化リスクも高まる」として、必要に応じたマスク着用や換気などを呼び掛けている。