新型コロナウイルス感染拡大の出口が見通せない中、最近の新規感染者数は東日本での増加が目立つ「東高西低」が際立っている。流行「第8波」とインフルエンザの同時流行も懸念され、北海道や東北地方の自治体は警戒を強める一方、その余波で忘年会の予約のキャンセルなど苦境が続く飲食店。師走に入った各地の表情を追った。
都道府県の人口10万人当たりの1日の新規感染者数でみると、今月1日は宮城が最多の161・2人、長野が148・3人と続き、上位は東日本が目立つ。逆に最も少ない沖縄は40・5人と宮城の4分の1だ。
なぜ東日本、それも北海道や東北地方で高止まりしているのか。共通するのは「寒さが厳しくなって窓を開けて室内を換気するのが難しい」(福島県新型コロナウイルス感染症対策本部)という地域事情だ。
青森県感染症対策コーディネーターで医師の大西基喜さんは、新規感染者の東高西低の理由について季節要因に加え、集団免疫に地域差があるとの見方を示す。
「都道府県で格差があるのは、第7波の感染者が多かった地域では集団免疫が確保され、逆に北海道や東北などは他の地域と比べて第7波の感染者が少なかったため、(集団免疫が低く)第8波で増えているのではないか」と分析し、積極的なワクチン接種を求める。
防止対策に限界も
警戒する自治体も手をこまねいているわけではない。新型コロナの病床使用率が11月30日時点で63・3%に達した宮城県の村井嘉浩知事は同日、「医療への負荷が高まっている。第8波に入った」と危機感を示し、県独自の「みやぎ医療ひっ迫危機宣言」を発令した。
栃木県も11月中旬、新型コロナとインフルの同時流行に備え、県独自の注意報を発令。今月1日には新型コロナ病床の確保レベルを引き上げた。同時流行のピーク時には1日約1万4千人の患者が発生するとの試算を示した新潟県は、新型コロナとインフル両方のワクチン接種を推進する。
とはいえ、ワクチン接種とともに、マスク着用、3密回避、大声での会話を避ける…といった基本的な感染防止策の繰り返しにとどまり、感染防止には限界も。群馬県の担当者は、サッカー日本代表が欧州の強豪に勝利するなど盛り上がるワールドカップ(W杯)カタール大会を念頭に、こう漏らす。「マスクもせず歓声をあげる観客席の映像を通じて、自分たちも感染防止策を守らなくても大丈夫と誤解されたら困る」
「師走は絶望的」悲鳴の飲食店
一方、行動制限のない師走を迎え、平時ならば稼ぎ時の飲食店の表情は曇りがちだ。東京商工リサーチによる今年の忘年会や新年会の開催意向調査(全国の企業4611社対象、10月上旬実施)によると、「開催しない」が全国平均で61・4%。昨年の調査に比べて9ポイント減だが、東日本では秋田を除き、なお開催に慎重な傾向がうかがえる。栃木県の企業では「開催しない」が75・6%に達し、都道府県別で最も高かった。
その栃木県内の居酒屋の男性店主は「忘年会は年々減り、参加人数も少人数。12月の予約もキャンセルが増え始めた」と同業者の声を代弁する。
「客足も戻らず、かといって行政の資金的な支援もなく、昨年末よりも厳しいかもしれない」(前橋市の居酒屋店主)、「年末年始の宴席は少人数グループがちらほら。師走は絶望的だ」(北海道苫小牧市の焼肉店経営者)-との悲鳴も聞こえてくる。
アクセルとブレーキに例えられるように、感染拡大防止と経済活動の両立は難しい。政府は新型コロナの感染症法の分類見直しに向けて議論を始めた。危険度が2番目に高い現在の「2類」から季節性インフルエンザと同じ「5類相当」になれば、平時の経済活動に近づく。「『忘年会はしない』という客がほとんど」と頭を抱える福島市の繁華街で飲食店を営む男性は「5類の扱いにして早く経済を回してもらいたい」と訴える。