新型コロナで倒産・収入減…「住宅ローン難民」が増加する可能性

新型コロナの影響が次々と…

新型コロナウイルスによる混乱が実態経済にも影響を与え始めている。

愛知県では、中国からの観光客をメインにしていたホテルが倒産するなど、観光、飲食業だけではなく、製造業などにも不安が広がっている。

倒産やリストラに拍車がかかれば、収入が途絶えて、住宅ローンの返済が困難になる人たちが増えてくるのではないだろうか。

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そんなとき何もしないで延滞を続けていると、競売によって住まいを取り上げられ、借金だけが残るといった最悪の事態もあり得る。

しかし、そうならないための対策もある。いつ我が身に影響が及んでくるかわからないので、転ばぬ先の杖として知っておきたいところだ。

休業保障が出ない企業も多い?

新型コロナウイルスの汚染拡大を防ぐため、政府は広く経済活動やイベントの自粛を求めている。

早くも倒産企業があらわれ、大手企業では全社規模でテレワーク、自宅待機を実施するなど、影響が広がっているのは周知の通りだ。

大手企業ならテレワークでも通常通り給与が支給されるだろうが、コロナウイルス倒産に陥った場合には、収入が途絶えてしまう。

まして中堅・中小企業でも会社側が自宅待機とした場合には、一定の保障があるだろうが、安全のために自主的に自宅待機した場合などは、給与が出ず、収入が減少する可能性が高いのではないだろうか。

短期間で終息すればいいが、これから1ヵ月、2ヵ月と長期化すると、当然のことながら家計への影響が出てくるし、住宅ローンの返済が厳しくなる家庭も増えてくるだろう。

そもそも、このところは図表1にあるように、自己破産が少しずつ増えつつある。

2017年度、2018年度は前年度比で6%台の増加が続いている。

キャッシュレス化で、家計の状況をキチンと把握できていない人が増加しているのが大きな要因といわれるが、このうち、2割前後は住宅ローンによる破綻という見方もある。

そこにコロナウイルスによる収入減少が加われば、いっそう深刻な事態になりかねない。

図表1 自己破産申請件数と前年度比の推移

(資料:最高裁判所『司法統計』)

住宅ローンの延滞が半年続くと…

しかし、「コロナウイルスのせいだから仕方がない」というのは、言い訳にはならない。住宅ローンは、返済を待ってはくれないのだ。

一般的には延滞が半年続くと、住まいは競売にかけられる。競売の落札価格は市場での取引価格よりかなり安くなるのが普通で、落札額ではローン残高を返済仕切れず、住まいを取り上げられた上で、ローンの返済だけが残るといった悲惨な状況に陥りかねない。

だからといって自己破産すると、住宅ローン債務はチャラにできるものの、資産のほとんどは取り上げられて、手元には生活資金などしか残せない。

しかも、将来、クレジットカードを作ったり、再び住宅ローンを利用したりしたいと思っても、信用情報に自己破産の履歴が残っていれば、さまざまな制約が出てくる可能性がある。

自己破産は最悪の手段だし、まして消費者金融からの借り入れでその場を凌ごうなどとは考えない方がいい。そうなる前に打つ手はある。収入が減ったり、なくなったりしても、何とか返済を続けて、マイホームを維持する道があるのだ。

延滞発生前に金融機関に相談を

では、具体的にどうすればいいのか。

何よりも大切なことは、延滞が発生する前に、住宅ローンを利用している金融機関で相談することだ。延滞が発生してからでは、担当者の心証を害して、相談しにくくなるし、住宅ローンの返済条件が厳しくなってしまう。

延滞には、意外に知られていない落とし穴があるのだ。

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ほとんどの人が、住宅ローンの金利に関しては優遇金利制度の適用を受けているはずだが、住宅ローンの契約書には、「延滞が発生すると優遇金利の適用を受けられなくなる」といった内容の記載があるはず。

つまり、延滞した翌月から金利が上がって、返済額が増加、いっそう返済が厳しくなってしまう。

たとえば、2020年2月現在、メガバンクの変動金利型の住宅ローンの店頭表示金利は2.475%だが、優遇金利制度によって0.6%台、0.5%台で利用している人が多いだろう。それが、もとの店頭表示金利の2.475%に戻るのだからたいへんな事態だ。

期間延長や一定期間の返済額減額の可能性

借入額4000万円、金利0.6%、35年元利均等・ボーナス返済なしだと、毎月の返済額は10万5611円だが、3年後に延滞が発生、金利が2.475%になると、返済額は13万9177円に増加する。「泣きっ面に蜂」とはこのこと。いよいよ競売へ向けて坂を転げ落ちるだけだ。

そうなる前に、金融機関に相談すれば、救済策の適用を受けられる可能性がある。金融機関だって、お客に自己破産されるよりは、何とか返済を続けてもらうほうが得策だし、担当者としては社内での評価が落ちるのを防げるメリットがある。

このため、条件を緩和すれば確実に返済を続けることができるお客であると判断できる場合には、条件の変更などに対応してくれる。

民間機関ではそうした対応の内容については詳細を公開していないが、フラット35を実施している住宅金融支援機構では、(1)返済期間の延長などによる返済額の減額、(2)一定期間、返済額を減額、(3)ボーナス返済の変更――といった条件変更メニューを用意している。民間でも、これに準ずる対応を行っているとみられる。

返済額を毎月2万円以上減額

(1)の返済期間延長は、離職や病気などで返済が困難となっている人で、以下の条件すべてに当てはまる人が対象になる。

・年収が年間返済額の4倍以下になっている人
・月収が世帯人員×6万4000円以下になっている人
・住宅ローンの年間返済額の年収に占める割合(返済負担率)が、年収400万円未満の人は35%、400万円~700万円未満の人は40%、700万円以上の人は45%を超える人

この条件に当てはまれば、最長15年間返済を延長できる。

図表2にあるように、借入額4000万円で、3年後に返済が困難になったときに、この適用を受ければ、毎月の返済額11万2914円が8万2456円に減って、3万円以上負担を減額できる。これなら、何とか返済可能という人も多いのではないだろう。

図表2 期間延長による返済額軽減例

完済までの総返済額は増加する

(2)の一時的に返済額を減額するケースは、たとえば、子どもの教育や入院などで一定期間だけ支出が多くなる、または収入が減少するといった場合に適用される。

一定期間後には元に戻すのが原則。減額幅はケースバイケースだが、たとえば、毎月の返済額を7万円から5万円に減額するケースなどが想定される。

そのほか、(3)のボーナス返済の変更は、ボーナス返済をなくして毎月返済だけにする、あるいは比重を変えるなどの対応が可能だ。

ただ、(1)(2)に関してはあくまでも一時的な負担軽減策であり、軽減策の適用を受けると、完済までの総返済額はむしろ多くなってしまう。

新たな仕事が見つかったり、収入が元に戻ったりしたときには、早めに元の返済期間、返済額に戻すのが得策だ。

解決策を頭に入れておこう

以上のような条件変更によっても、簡単には返済を継続できそうもないということであれば、金融機関による競売になる前に、自分で売却する、いわゆる任意売却という手がある。

ただ、ローン残高が売却可能価格を上回っている場合には、その差額を手持ち資金などで埋めることができないと、金融機関は抵当権のかかっている物件の売却を認めないこともある。

その場合には、親などに頼み込むなどして資金を用意して売却するのが現実的かもしれない。そうすれば、マイホームは失うものの、ローン支払いをゼロにできる。

もちろん、賃貸住宅などを見つけて引っ越す必要があるが、競売や自己破産に陥るよりは、リセットしやすいだろう。

競売や自己破産はマイナスからの出直しになるが、任意売却が可能なら、ゼロからのスタートですむからだ。

自分たちにとってはどの方法が可能なのかを確認して、できるだけ傷の少ない形で乗り切れるようにしていただきたい。

そのためにも、いまからこうした解決策があることをシッカリと理解しておくことが大切だ。

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