花王と北里大学は7日、医療系のスタートアップ企業と共同で新型コロナウイルスの増殖を抑える抗体を開発したと発表した。小型で安価な特徴をいかし、製薬会社などと提携して治療薬や検査薬の製品化につなげる。
今回開発したのは、大きさが一般的な抗体の10分の1程度のVHH抗体だ。通常、ウイルスは細胞に侵入して増え病状が進行する。新たな抗体はウイルスに結合して細胞に入ることを妨げる。感染した細胞でウイルスが増えても周辺の細胞に広がることを防ぎ、治療効果が期待できる。
花王は洗剤の開発につながる微生物の培養などの技術の蓄積を持つ。埼玉大学発のスタートアップ、イプシロン・モレキュラー・エンジニアリング(EME、さいたま市)と連携し、同社が持つ抗体候補のタンパク質を効率的に見つけられる技術を応用した。
花王はEMEの技術で見つかった抗体候補の成分の情報を基に、遺伝子を合成した。北里大学との性能評価で、新型コロナウイルスの感染拡大を抑える機能を確認した。
候補のスクリーニングから抗体の作成まで3週間と、通常の開発の半分以下の時間で抗体を取得できたとしている。VHH抗体は小型で、安く大量に生産することができる。熱などに対する安定性も高く、輸送や保管もしやすいという。通常の抗体に比べ構造が簡単で改良にも適している。
体内から検体を採取してウイルスの有無を調べる検査薬のほか、感染後に注射などで抗体を投与する治療薬など幅広い応用が見込まれる。花王などの共同研究グループは今後、製薬会社など提携相手を探し製品化を目指す方針だ。