新型コロナの終息見通し立たず…新築マンション市場、秋まで“開店休業”か

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出されたことで、新築マンションのモデルルームは、ほとんどが休業してしまった。

 再開は今のところ「5月7日以降」と表示されているケースが多いが、それは宣言が解除されることが前提だろう。しかし、今の様子から考えると延長は必至のように思える。

 日本よりも強制力が強いロックダウンを行って1カ月以上が経過した欧米諸国でも、終息への見通しがハッキリとは見えていない。であるなら、より緩やかな「自粛」の日本での終息はさらに時間がかかるのではないか。

 そうこうしているうちに、夏になる。通常、モデルルームでの販売活動は7月の上旬まで。8月はお盆もあるので、本格的に販売活動を再開するのは9月からというのがパターン。ただ、今年はどうなるか分からない。

 昨年のことだが、五輪選手村跡地の大規模マンションで、集客活動が予定通り進まなかったのか、8月上旬まで申し込み受け付けを行い、お盆も含めたその前後の期間に契約手続きを行っていた。それでめでたく販売住戸が完売できたとは聞いていない。これも気になる。

 新型コロナが7月頃までに終息となっても、まさかお盆のさなかまで営業はしないだろう。9月から猛然と販売を再開することになる。

 気になるニュースもある。一部のゼネコンが建設現場での感染拡大を防ぐため、作業を休止し始めた。この動きがマンションの建設現場にも広がってきた場合、建物の完成が遅れる。購入する側からすれば、入居時期が定まらなくなる。当然、購入契約へのモチベーションは下がってしまう。

 ただ、新型コロナが7月頃までに終息、あるいはその見通しが確かなものになれば、9月からの販売再開には「回復バブル」的な需要が生まれる可能性がある。

 現在、新築マンションを開発分譲しているデベロッパーは、財閥系や大手企業のグループ会社がメインだ。そういう会社が倒産する可能性は低い。だが、一部にはどの企業グループにも属さず、マンション開発を主な事業にしている「独立専業」のデベロッパーもある。リーマン・ショック後の不況を乗り越えた企業たちで、ここは深刻な経営の行き詰まりを迎える恐れがある。

 秋以降、業界にはどんな風景が見えてくるのか、今のところは五里霧中。騒ぎの展開を見守るしかない。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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