新型コロナウイルス 北海道の感染者はなぜ多い?

比較的整う検査態勢

 新型コロナウイルスの感染者が25日までに35人に上った北海道。政府の専門家会議では、小規模な集団感染「クラスター」の発生が指摘され、25日には感染者数が東京都を上回って都道府県別で最多となった。なぜ感染が相次ぐのか―。統計データや専門家への取材から「検査数が比較的多い」「冬の一大観光地」という要因が見えてきた。

【表】全国の感染者数の上位5都道府県

 道内の新型コロナウイルスの感染検査は道立衛生研究所(札幌)など2カ所で行い、1日最大で約60件の検査が可能だ。25日正午現在、全道で計170人に実施され、道の担当者は「許容量を超えずに、必要な検査ができている」と話す。

 厚生労働省は24日現在、全国で1017人に実施したとするが、感染者周辺の「濃厚接触者」は検査済みでも検査数には含んでおらず、全体数は明らかになっていない。札幌保健医療大の小林清一教授(臨床免疫学)は道内の感染確認の多さについて「道内は比較的、検査態勢が整ってきたという見方ができるが、広範囲で確認されていることを考えると自覚症状がない感染者が感染を拡大させている可能性がある」と指摘する。

 一方、他の都府県を見ると、大阪府は24日までに141人に検査を実施し、感染者は1人だけ。愛知県は検査態勢が「道内とほぼ同規模」(担当者)とするが、感染者は同20人だ。

道内には冬場も外国人観光客が訪れる観光スポット、イベントが多い=札幌市中央区の北海道庁 冬の人気観光地のため、人との接触多く

 道内の感染率の高さが際立つ状況について、北海道医療大の塚本容子教授(感染管理)は、道内が国内有数の冬の人気観光地であることを踏まえ、「人と人が接触する機会が増え、必然的にウイルスに触れる可能性が高まっている」と警鐘を鳴らす。

 冬場の観光需要は全国的に落ち込む傾向にあるが、道内はスキー場や流氷など冬ならではの観光地が多い。2018年の観光庁の調査によると、道内の1~3月の宿泊客数は約457万人。集計済みの30都道県の中で東京都、千葉県に次いで3番目に多かった。

 さらに冬場の観光地点や行事開催場所は1200地点と全国最多だ。雪を避けて屋内で楽しめる施設も少なくない。塚本教授は「道民も屋内施設で余暇を過ごす時間が増え、飛沫や接触による感染が起きやすい。症状がある人は自宅でマスクをして安静にし、少しでも体調が悪ければ仕事を休むなどの対応を心がけてほしい」と呼び掛けている。

タイトルとURLをコピーしました