東京や大阪だけでなく、地方でも感染が広がっている新型コロナウイルス。感染経路で目立つのが家族や親族間だ。4月上旬、宮城県仙台市の英国風パブで発生したクラスター(感染者集団)。その場で感染した40代男性と同居する家族2人も感染していることがわかった。ほぼ同時期に、山形県でも乳児を含む親族5人のクラスターが確認された。
WHOの調査報告書によると、新型コロナウイルスの感染は主に「家族」間で発生している。最もサンプル数が多い中国では広東省および四川省での調査で、78~85%のクラスターが家庭内だと報告されている。
わだ内科クリニック院長の和田眞紀夫さんはこう警鐘を鳴らす。
「新型コロナは発症前でも感染させてしまうため、知らないうちに感染してウイルスを持ち帰る人がいるということ。もはや自宅にもリスクが潜んでいる、と思った方がいいでしょう」
最も感染リスクが高いのは夕食時だという。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはこう解説する。
「食事中は唾液の分泌が多い状態であるうえ、咀嚼しながら話すので細かい唾液が飛び散ってしまう。通常の会話よりも、食事中の方が飛沫感染するリスクが高いといえます。食事の時間が長く、家族が揃うことの多い夕食時が最も危険なのです」
だが、家で夕食をとらないわけにもいかない。クラスターはどう防げばいいのか。
◆小皿で「定食風」に
家庭では、鍋や大皿から取り分けるスタイルで、取り箸を使わない家も少なくない。
「感染リスクが非常に高い唾液のついた箸からウイルスが料理にうつってしまう。あらかじめ、おかずをそれぞれの小皿に盛っておく定食風が基本です」(一石さん)
◆時間差「ぼっち飯」
食事中の会話はご法度。会話は食後にマスクをつけてからにしたい。
「理想的なのは、家族が“時間差”で食事をとり、同時にテーブルにつかないことです。大家族で難しければできるだけ人数を減らしましょう」(一石さん)
◆対角線上に座る
どうしても2人など複数人で食べる場合、向かい合う形で食卓に座ると、正面から飛沫を受けやすくなる。
「2m程度の間隔を空けたいところですが、家庭のテーブルでは難しい。間隔は1mでもいいので、向かい合わないように対角線上に座ってください」(一石さん)
◆シャワーの後に
仕事や買い物などで外出した人は、「家庭にウイルスを持ち込んだかもしれない」という意識を持つことが重要だ。
「手洗いやうがいをしても、髪の毛や服にウイルスが付着しているかもしれません。外出していた人は、帰宅後にシャワーを浴び、室内着に着替えてから食卓に向かう方がいい」(和田さん)
ほかにも、WHOは外出自粛中の食事について、薬への影響や肝機能障害リスクなどを理由に挙げ、「いかなるアルコール製品も摂取すべきではない」としている。お酒が入ると、夕食時間も長くなりがち。このコロナ禍では夕食は短時間で済ませるのが望ましい。命を守るためには、お酒も“自粛”した方がよさそうだ。
感染が急拡大し、誰がいつ新型コロナに感染してもおかしくない状況。“家族総倒れ”を防ぐためにも、食事のとり方には細心の注意を払いたい。