新型コロナ感染者「ゼロ」は岩手、鳥取の2県 理由を探ってみた

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府が首都圏や関西圏など7都府県を対象に初めて緊急事態宣言を発令する中、岩手、鳥取の2県では、感染者が今も確認されていない。全国的に続々と新たな感染者が判明する中、踏みとどまっている2県。各県の担当者や専門家に話を聞き、理由を探ってみた。【小鍜冶孝志】

 岩手県独自の対策があるのか、県のホームページ上で公開されている情報を確認してみた。しかし、手洗いやうがい、アルコール消毒の推奨など一般的な予防策の記載が並び、目立った記述はない。同県の担当者に、特別な感染予防対策があるのか聞いてみた。三浦節夫・感染症担当課長は「もしあれば、こちらが教えてほしい」。ただ、2県の共通点については「人の往来が少ない点は共通している」と話す。

 鳥取県の推計人口は約55万人で全国で最も少ない。岩手県も約122万人で全国で30番台の少なさだ。岩手県の三浦課長は「当然ながら接触が少ないと感染するリスクも減る」と言う。

 鳥取県の担当者も「人口が少ないことに加え、大都市圏と比較し交流人口も少ない」などと語り、同様の見解を示す。鳥取県はインターネット上などで「コロナ疎開」の行き先として話題に上ることもあるが、同県の平井伸治知事は記者会見で「感染拡大防止や外出自粛に反すると自覚してほしい」と指摘し、同県担当者も「人が集まればそれだけリスクは高まる」と警戒している。

 一方、岩手県は人口密度も低い。県土は約1万5000平方キロで本州一の面積を誇り、四国4県に匹敵する。総務省のデータ(2015年時点)によると、岩手の人口密度は1平方キロ当たり83人で、北海道に次いで低い。密閉、密集、密接の「3密」になりにくい環境も影響しているとみられ、三浦課長は「県土の大きさも一因ではないか」と説明する。

 ただ、感染のリスクと隣り合わせの状況は変わらず、「すでに感染者が出ているのではないか」という声も上がる。3月末には、北海道小樽市で新型コロナウイルスの感染が確認された40代男性と濃厚接触していた岩手県内の4人がPCR検査を受けた。結果は陰性だったが、2週間の健康観察となった。

 岩手県によると、8日までに県内で実施したPCR検査は、わずか127件だけ。岩手より人口が少ない鳥取県と比較しても検査数で劣る。三浦課長は「保菌者がいた可能性は完全に否定はできない」とした上で「重症者がいれば必ず情報が上がってくる。その報告はない」としている。

 専門家にも意見を聞いてみた。感染症に詳しい「けいゆう病院」(横浜市)の菅谷憲夫医師は「人口がまばらで、東京や大阪など都市部との行き来も少ない。感染者が出ていない理由として、間違いないだろう」と話す。その上で、都市部を中心に人から人への感染が拡大していると指摘し、「ウイルスは風に運ばれて人に感染するわけではない。人同士の接触が少ない県は、当然感染のリスクも低くなる」と見解を示した。

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