新型コロナウイルスに感染して今月14日までに国内で死亡した162人のうち、病院に入院中に感染したとみられるのは36人で、2割を超えていたことが各都道府県への取材で明らかになった。高齢者施設に入所、通所して感染したとされるケースを加えると64人に上り、4割近くになる。専門家は「新型コロナは無症状者が多いのが特徴で院内感染が起こりやすい。積極的に検査を進め、感染拡大を防止するのが大切だ」と強調する。
各都道府県が14日までに公表した死者計162人について、性別・年代、持病の有無のほか、入院中や施設入所・通所中に感染した可能性などについて調べた。
入院中に新型コロナにかかったとされる感染者は全体の2割を占めたが、非公表や不明のケースをのぞいて集計すると、亡くなった人の3割に上った。高齢者施設を加えると5割を超えており、病院や施設での感染拡大の深刻さをうかがわせた。
性別をみると、男性が106人、女性が40人、非公表・不明が16人で、男性が女性の2・5倍超だった。
年代は80代が最も多い53人で、70代43人▽60代17人▽90代15人▽50代5人――と続く。60代以上が8割を占めた。30代も茨城、神奈川県で1人ずつ、40代も大阪府で1人いた。一方、年代が非公表・不明とされたのも26人いた。
また、162人のうち少なくとも34人が心疾患や肺気腫、糖尿病などの持病があった。
症状が出たり、PCR検査(遺伝子検査)で陽性と判明したりしてから死亡するまでの日数についても確認した。いずれも発熱などの症状が出てから4~40日目に死亡しており、8日目と9日目がともに4人で最も多かった。陽性判明からは1~39日目で亡くなっており、判明した日に亡くなったのは11人で最多だった。死亡後に陽性と分かったケースもあった。
感染が広がり、複数の死者が出た病院や高齢者施設は少なくない。札幌市の札幌呼吸器科病院では入院中の60~90代の3人の男性が死亡。東京都では台東区の永寿総合病院で大規模なクラスターが発生し、入院患者24人が亡くなった。群馬県では伊勢崎市の有料老人ホーム「藤和(とうわ)の苑(その)」に入所していた80代の男性3人が死亡している。
感染症に詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・感染制御センター長は「海外でも病院と高齢者施設で多くの死者が出ている。国内では衛生管理などの対策は徹底しているが、新型コロナは無症状の感染者もいるので、院内・施設内感染が起こりやすい。別の病気の入院患者らが感染している可能性もある。院内・施設内の感染を防ぐため、積極的にPCR検査をしていく必要がある」と指摘。男性の割合が高い理由については「現時点で科学的な説明はできない」と前置きした上で「通常の肺炎も男性の方が死亡率が高い。喫煙習慣が影響している可能性はある」としている。【関谷俊介、椋田佳代、林田奈々】