新型コロナウイルスの感染拡大に備え、時間軸に沿って自治体の災害時の行動を決めておく「タイムライン防災」を、感染症にも応用しようとする動きが広がっている。専門家は「いつ、誰が、何をするかをあらかじめ決めておくことで、緊急時に混乱なく対応できる」と推奨している。
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タイムライン防災では、台風の接近、上陸、通過など状況を想定して行動計画を作成。「3日前」「前日」と時間軸に沿って、自治体の各部署や住民が何をするかを事前に決め、減災につなげる。計画作成時に医療機関や企業の意見も反映させ、地域全体で共有することで効果は大きくなるとされる。
この考えを新型ウイルスに応用したのが大阪府河南町だ。2009年に発生した新型インフルエンザ流行時の行動計画をベースに、「近隣国で発生」「府下市町村で発生」「町内で発生」「町内で複数発生」などと8段階で状況を設定した。
状況に応じて、「時差出勤の検討」「物資の追加発注」「応援職員の要請」など、部署ごとにやるべきことを策定。全体の流れをつかめるようA3判の紙1枚に素案としてまとめた。
長野県飯田市も同様に、新型ウイルス感染者の市内での発生に備えた「対応計画案」などを作成した。担当者によると、東北や九州の自治体から「ぜひ参考にしたい」との問い合わせが相次いでいるという。
タイムライン防災の普及に取り組む東京大大学院の松尾一郎客員教授(危機管理)は「事前に被害を想定し対応を決めておくことで、場当たり的ではない先手先手の対応が可能になる」と指摘。「台風は見えるが、見えない感染症でも、事前に動きを決めておくことで、混乱なく適切な行動ができる」と話している。