新型コロナ禍、夏になれば変わるのか 冬に出現、感染力や重症化率に変化は

新型コロナウイルスの感染が続く中、日本列島は夏の季節を迎えた。緊急事態宣言は全国で解除されたが、夏は空調の効いた屋内で過ごす機会が多く、人が集まれば「3密」の状態にもなりやすい。冬に出現した新型コロナの感染力や重症化率はどう変化するのか。(有年由貴子) 【図】緊急宣言解除15日間で感染者数元通りに…  《新型コロナの収束は、温度と湿度との関連はあるのでしょうか》  神戸市西区の男性読者(75)から、こんな疑問が寄せられた。  一般的に、新型コロナと同じインフルエンザなどの呼吸器ウイルス感染症は、寒い時期に感染を起こしやすく、重症化しやすい。  国立感染症研究所などによると、世界的大流行となったスペイン風邪は、1918年に北半球の春と夏に発生した第1波は感染性は高いものの、致死性ではなかったが、晩秋の第2波は10倍の致死率となった。  2009年新型インフルエンザの流行時は、英国では春夏の第1波より冬の第2波の方が死者が多く、日本でも秋冬は死者が多い傾向にあった。  ■「夏は重症者減る」  国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一医師によると、飛沫(ひまつ)として空気中に放出されたインフルエンザウイルスは、気温や湿度が高いほど活性を失いやすい。これまでの研究報告では、新型コロナはインフルエンザよりやや高湿度に強いものの、よく似た傾向を示しているという。  一般に、湿度が高くなると鼻やのどなどの粘膜にある繊毛の運動が良くなり、ウイルスなど異物を体外へ排出する働きが強まる。さらに、飛沫が乾燥せず比較的大きな粒子のまま空気中を漂うため、吸い込んでも肺に到達しにくく、鼻やのど付近にとどまりやすい。  こうしたことから、西村氏は「新型コロナは夏になると、冬よりも重症者の割合が減り、軽症で済む患者の割合が増えるのではないか」と話す。  ■「人の行動の影響大」  新型コロナは冬の季節だった北半球だけでなく、暑い気候の南米、アフリカでも感染が拡大している。「気温などの要素よりも、人類に免疫がないということが流行拡大につながっているのでは」と分析するのは、新潟大の斎藤玲子教授(公衆衛生・ウイルス学)だ。  米科学アカデミーの専門家委員会も、温度と湿度が高いほど新型コロナの感染力が低下するとの実験結果があるとする一方、「夏の気候である地域でも感染が急拡大している」と指摘。「他の地域でも気温と湿度の上昇が感染を減少させるとは想定できない」としている。  夏はウイルスの不活化に効果がある紫外線量も増加するが、新型コロナへの紫外線の影響を研究している大阪府立大の秋吉優史准教授は「日陰部分や、飛沫が空気中を漂う数秒間程度ではほとんど影響がないだろう」とする。  さらに、インフルエンザは熱帯では乾期よりも雨期に流行しやすい傾向にある。こうした現象は「雨宿り感染」といわれ、雨期には空調が効いた密閉空間に人が密集してしまうことも大きな原因とされる。  西村氏は「感染拡大への影響は、気候や環境の変化よりも人の行動の方がずっと大きい」と指摘。夏になっても換気や人との距離を保つなど、引き続き冬同様の警戒が必要だとしている。

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