新型コロナ防止のため「働き方改革」できない企業に明日が無い、真の理由

国内でも新型コロナウイルスによる影響が深刻化している。日本はもともと感染が拡大しやすい環境であり、通常のインフルエンザでも毎年3000人以上が死亡するというちょっとした異常事態が続いている。

 新型コロナであれ、インフルエンザであれ、感染症を予防する方法は同じなので、日常的な感染対策を着実に実施することが、新型コロナ対策にもつながるはずだ。以下では企業組織やそこで働く個人における感染拡大防止のポイントをまとめた。

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企業の新型コロナ対策が急ピッチで進められているが……(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

企業と従業員向け、7つの必須防止策

 新型コロナは飛沫感染と接触感染が主要な感染経路とされている。それ以外の経路についても可能性が取り沙汰されているが、感染は確率的に決まるので、まずは可能性が高い部分から対処するのが原則であり、確率が低い部分について感情的になって議論してもあまり意味はない。

 飛沫感染と接触感染を回避するためには、人が近距離で密集する場所に長時間滞在することを避け、他人とできるだけモノのやりとりをしないことが重要となる。

1.テレワークと時差出勤

 説明するまでもないが、満員電車での通勤が感染拡大の温床となっているのはほぼ間違いない。一部の企業では時差出勤や在宅勤務に切換えるところが出てきている。業務上、出社が必要な人はたくさんいるはずなので、そのような人たちのためにも電車の混雑は緩和した方がよい。時差出勤や自宅勤務が可能であれば、すぐに体制をシフトできるよう組織のトップは工夫すべきである。

2.書類の受け渡しの抑制

 あまり意識していない人が多いが、業務における書類の受け渡しも感染拡大の要因となっている。諸外国ではインフルエンザが流行すると、書類の受け渡しを制限したり、手の消毒を推奨したりする企業も多い。

 もっとも効果的なのがペーパーレス化であることは明白であり、今回の感染拡大をきっかけに業務のIT化を徹底的に進めた方がよいだろう。米国では中小企業でもごく普通にクラウドで取引先と書類をやりとりしている現実を考えると、日本のIT化は遅れていると言わざるを得ない。IT化は業務の効率化にもつながるので一石二鳥だ。

不必要な会議、出社を止めよ

3.不必要な会議・集会の中止

 「会議のための会議」という言葉があるように、日本の企業社会では不必要な会議が多すぎる。会議で不特定多数の社員が集まれば、当然、感染リスクも増大する。以前から一部管理職の承認欲求を満たすためだけの会議はやめるべきという指摘があったが、今回の感染拡大を機に、不必要な会議は一掃する努力が必要だろう。

 企業のケースではないが、生徒の感染が明らかになった石川県のある中学校では、保護者に対する説明会を開き、多くの人が1つの場所に集まるという本末転倒なケースもあった。安心したい気持ちは分かるが、可能な限り人が集まるイベントは回避した方がよい。

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不必要な出社や会議は職場にとっても感染リスクでしかない(写真はイメージ。提供:ゲッティイメージズ)

4.無理な出社の禁止

 これも、以前から指摘されてきたことだが、日本では具合が悪い状態でも出社が強要されるケースが後を絶たない。感染した可能性がある人をわざわざ職場に来させるというのは非合理の極みであり、こうした習慣はすぐにでも改善すべきだろう。長時間労働についても同じである。過重労働は体を疲労させ、免疫を低下させるので、可能な限り避ける工夫が必要である。

5.消毒と手洗いの推奨

 不特定多数の人が触れるエレベーターやコピー機のボタンはウイルスの巣窟である。ここを触った手で、口や鼻、目に触れれば当然そこから高い確率で感染する。手洗いや小まめな手の消毒を推奨することで、大幅に感染を防げるはずだ。

6.キャッシュレスの推奨

 身の回りに存在するものでもっとも汚い部類に入るのが紙幣を始めとした貨幣である。付着しているウイルスや細菌の数はトイレの便器に匹敵するとの指摘もあるくらい、お金というのは汚染されている。お金を触った手で、そのままサンドイッチを食べたりするのはかなり危険な行為だと思った方がよい。やはり手洗いや消毒が重要だが、究極の解決策がキャッシュレスであることは説明するまでもない。

7.病院のむやみな受診の抑制

 満員電車などと並んで感染拡大の温床になると言われているのが、実は病院である。不安というだけの理由で特に症状もないのに病院を受診する人が増えているが、こうした行為は控えた方がよいだろう。自身が病院で感染するリスクもあるし、何より来院者が増えてしまうことで、本当に治療が必要な患者への対処に制約が生じる可能性もある。

感染症対策、実は働き方改革内容と同テーマ

 一連の感染防止対策を客観的に眺めて見ると、ほとんどの項目が「働き方改革」と密接に関係していることが分かる。過重労働の抑制や時差出勤、業務のIT化(ペーパーレス化)、不要な会議の中止といった内容は、以前から働き方改革として何度も議論されてきたテーマである。

 先ほど、通常のインフルエンザで毎年3000人以上が亡くなっているという話をしたが、超過死亡(インフルエンザの流行がなければ回避できたと推定される死亡者数)を考慮すると、死亡者数は1万人を超えるともいわれる。インフルエンザによる死亡者数はリーマンショック以降、急増しており、これは異常事態といってよい。つまり、今回のコロナウイルスがなかったとしても、感染症対策というのは日本の企業における緊急課題なのである。

 企業にとっては大きな負担だが、業務のIT化と感染症対策の親和性が高いことは、企業にとってむしろ朗報であると考えた方がよいだろう。

 働き方改革をしっかり実施できる企業は、感染症にも強く、社員の健康が維持されることになる。逆に言えば、こうした対処ができる企業とできない企業では、そこで働く社員の生活に質的な格差が生じる可能性もある。社員の側にも、こうした対策を実施する企業を選択していくという主体的な意識が必要となる。

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