中国・武漢発の新型コロナウイルスによる肺炎では、武漢からのバスツアーで運転手を務めた日本人男性とガイドの40代女性の国内感染が確認された。潜伏期間中や症状がない状態でも感染するとされ、ウイルス保有者との「濃厚接触」はリスクが大きい。国内での2次感染を防ぐためになるべく避けたい場所はどこなのか。
政府は武漢から帰国した邦人の症状を一元管理する「健康フォローアップセンター」を29日に設置、感染拡大防止に全力を挙げている。
ただ、すでにウイルスが日本国内でばらまかれている恐れもある。国内で初の「人から人」へ感染した奈良県在住の60代男性は武漢からのツアーバスの運転手を、大阪府在住の外国籍の40代女性はガイドを務めていた。ツアー客に感染は判明しておらず、最長14日間とされる潜伏期間中の感染だった可能性もある。国内の空港ではサーモグラフィーなどで検疫を行っているが発熱がなければチェックするのは難しい。
「感染が広がるのは何とか防いだ方がいい」と語るのは、劇症型肺炎用の治療薬に関する論文もある帝京大学アジア国際感染症制御研究所所長の鈴木和男教授だ。「鳥インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)の際に、呼気からの感染が懸念されたが、今回、ツアーバスの運転手が感染したことから呼気から感染したとも考えられる」と指摘する。
濃厚接触によるウイルス感染について鈴木氏は、「家族や友人などとの(距離が)2メートル程度で飛沫(ひまつ)感染しやすい。ドアノブなども注意すべきだ」と話す。
「学校、スーパーマーケットやショッピングモールもリスクがある。テーマパークでも室内に密集する場所は注意が必要だ。閉鎖空間に長時間いるイベントは避けた方がよく、会議なども含まれる」とアドバイスする。
中国政府は27日から海外への団体旅行を停止したが、すでに多くの観光客が訪日している。春節で帰国していた中国人の再来日も見込まれる。
中国事情に詳しいジャーナリストの奥窪優木氏は、「東京・銀座の百貨店や、空港につながる快速電車、モノレールに中国人観光客は多い。奈良や京都の寺社仏閣や、箱根や熱海、草津(群馬)などの温泉も人気だ。スキー場でもリフトやロープウエーでの接触も考えられる。観光客の目的が多様化しており、茅ケ崎やお台場のほか、アニメやドラマの“聖地巡礼”に訪れることも多い」と話す。
中国人に人気なのが大阪で、難波や心斎橋、大阪駅での買い物や、道頓堀での食事などに多くの旅行客が訪れている。
春節は30日に終えるが、「これまでは観光客の話だったが、日本在住の中国人が戻ってくれば、働いている飲食店や、中国系のスナックなどで感染する可能性も出てくるのではないか」(奥窪氏)という。
特に高齢者や持病のある人は注意しておきたい。