新型肺炎の症状、単なる風邪とどこが違う? いま知っておくべきこと

中国湖北省武漢市から新型コロナウイルス(新型肺炎)が感染拡大しています。産業医である私のもとにも、複数のクライアントから問い合わせがあり、関心の高さを日々感じています。

 そもそも今回の新型コロナウイルスとは何か? どのような感染対策ができるのか? 前回の記事でもお伝えしましたが、今回はその後判明した最新情報も交えてお伝えしたいと思います。

 正しく症状を理解することで、新型コロナウイルスにまつわる噂やフェイクニュースに惑わされることなく、冷静に判断・行動することができます。ぜひ参考にしてみてください。新型コロナウイルスとは?

 そもそも人間に感染を起こすコロナウイルスは6種類あり、そのうち4種類は“普通の風邪”の10~15%(流行期35%)の原因になっています。

 中東呼吸器症候群「MERS」、重症急性呼吸器症候群「SARS」は、重症化リスクが高く、世界的な流行を引き起こしましたが、今回の新型コロナウイルスはこの6種類とは異なるものです。

 武漢市で最初に確認された肺炎患者41人は平均49歳(41~61歳)で、症状は発熱(98%)、咳(76%)、筋肉痛・倦怠感(44%)、喀痰(28%)などでした。

 普通の風邪や季節性インフルエンザと似た症状だったため、これだけで新型コロナウイルスを鑑別することは困難だとわかっています。

 また、1月27日時点で、新型コロナウイルスの致死率は約3%です。「SARS」は致死率が9~16%で、死亡例の50%以上は65歳以上でした。そのことを鑑みるに、新型コロナウイルスも高齢者や基礎疾患がある人が重症化しやすいと考えられています。

新型のコロナウイルスの電子顕微鏡写真(出典:中国疾病予防コントロールセンター) 新型コロナウイルスの致死率は高いのか?

 感染率はどうなのでしょうか? 今のところ1人の感染者から1.3~2.5人に感染するとされています。

 麻疹の場合は1人が12~18人、風疹は6~7人、SARSは3人に感染するとされています。一方で、季節性インフルエンザは1~2人、MERSは1人未満への感染するとされていて、これよりは高い感染率だとわかります。

 ただし現在(流行早期)に検査されているのは、軽症例ではなく主に重症例と考えられます。よって、実際の致死率は3%より低いと予想されます。

 しかし、感染者のどれくらいが肺炎を起こすかは不明です。また、潜伏期間が2~14日間と比較的長く推定され、その間に感染が広まりやすいです(感染力が高い)。新型コロナウイルスにかかる人が増えれば、亡くなる人の絶対数や病人の人数が一気に増えるので、軽視はできません。

 また最も注意したいのが、現時点で特異的抗ウイルス薬(このウイルスに効く薬)がないことです。普通の風邪と同じような治療となります。ひとまずできる感染対策は、普通の風邪や季節性インフルエンザと同じようなものとなります。

中国滞在の有無は関係あるか? 風邪との違いは?

 武漢市に滞在しているかどうかではなく、過去の中国滞在歴、中国滞在歴者との濃厚接触が曝露リスクを判断する上で大切です。しかし、日本国内での感染例が複数出ると、中国滞在の有無は無意味になるでしょう。

 風邪の人全てに新型コロナウイルス感染症の検査を行うのは現実的ではありません。特異的抗ウイルスもないため、早期発見も意義が薄れます。軽症例は咳エチケット、自宅安静などで経過観察(診察は受けても入院はしない)、肺炎を併発するような重症例は入院しての治療となるでしょう。

 普通の風邪の場合、発症から3日過ぎれば症状のピークを過ぎることが多いです。発症から3日を過ぎても症状が増悪する場合は、肺炎の合併を考慮し、再度受診をしましょう。

 新型コロナウイルス感染症の場合、発症から1週間前後で悪化することが多いようですので、発症から3~5日経過しても良くならない、悪化する場合は、やはり、再受診をしましょう。

「重要・要注意」チェックリスト

 下記のチェックリストを参考に疑いがある場合は早めに医療機関に行きましょう。この3つのチェックポイントがそろうことが、発症の特徴です。

<重要チェックポイント>
□ 地域内での流行
□ 急激な発症
□ 38°C以上の発熱・悪寒

 重要ポイントの他にも次のような症状もあれば発症を疑いましょう。

<要注意ポイント>
□ 関節痛、筋肉痛
□ 倦怠感、疲労感
□ 頭痛
□ 寝込むほどひどい

 また、「咳、鼻閉(鼻づまり)・鼻汁、くしゃみ、喉の痛み」といった“かぜ症状”もほとんど同時か、やや遅れて現れます。もしも発症してしまったら、下記の事項を確認してください。

□ いつから症状(とくに発熱)がはじまったか?
□ 周りにインフルエンザの人がいるか?
□ 濃厚接触者は(誰と接していた時間が長いか)?
□ マスクを使っていますか?

bizSPA!フレッシュ 予防のための日常生活での心がけ

 会社員の場合、出社については、主治医の意見に従いつつ、人事部とよくご相談ください。いずれは、国内での感染症例が増えて、曝露歴があてにならなくなります。

 できることは、風邪や季節性インフルエンザの一般的予防方法と同じとなります。よく寝て、よく食べて、咳エチケットと手洗いをしっかりし、人混みを避けましょう。

 働き方改革の影響でテレワーク(在宅勤務)が可能な会社は、上手に使いましょう。

【予防のための日常生活での心がけ】

1:咳、くしゃみの際の「咳エチケット」も感染防止の上では大切です。咳やくしゃみなどの症状のある人には必ずマスクをつけてもらいましょう。

2:手洗いは、外出後だけではなく、可能な限り頻回に行いましょう。石けんを使って最低15秒以上行い、洗った後は清潔なタオルなどで水を十分に拭き取りましょう。

3:多くのウイルス性の病気は、粘膜を通して感染することが多いため、極力目や鼻や口などを触らないようにしましょう。

4:病気の人とは、極力接さないように心がけましょう。流行時には人混みを避けましょう。

5:それでも心配な時は、外出は極力控え、その際はマスクをつけましょう。

6:テレワーク(在宅勤務)が可能な場合、考慮しましょう。

7:もし急な発熱などの症状があったら、出社する前に必ずお医者さんに行きましょう。

季節性インフルエンザにも注意!

 新型コロナウイルスについて、米国の病院「Johns’ Hopkins」が世界的な流行度合いを一見でわかる情報を提供してくれています。

 また2月は日本では季節性インフルエンザが流行する時期でもあります。新型コロナウイルスと季節のインフルエンザの症状は似ています。急な発熱などを認めても、新型コロナウイルスに感染したとは限りません。冷静に判断し、まずはお医者さんに行きましょう。

 過剰に心配することなく、マスク利用や手洗いの徹底などの通常の感染症対策に努めれば十分だと思います。よく寝て、よく食べて、元気でいることが大切です。

 最新情報は刻々と変わっていますので、厚生労働省、「WHO」「アメリカ疾病管理予防センター(CDC)」の発表を参考にしてください。

<TEXT/武神健之>

【情報発信サイト】
■厚生労働省検疫所「海外感染症発生情報」
■厚生労働省「中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎の発生について」
■厚生労働省Twitter @MHLWitter

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