新社名も補償も丸投げで「ガバナビリティの欠如を証明した」 コンプラ専門家・八田氏がジャニーズの新方針を批判

ジャニーズ事務所が開いた10月2日の記者会見を、ガバナンスの専門家はどう聞いたのか。企業会計やコンプライアンスが専門の八田進二・青山学院大学名誉教授に聞いた。 【動画】「ジャニー喜多川さんからの性被害、中学卒業前だった」 ●「いかにガバナビリティー(統治能力)がないかを証明」 遅ればせながら救済に向け、形だけは整えてきたようであるが、相変わらず組織防衛が前提の会見であるように感じられました。 補償機能とマネジメント機能を分けることは当然の判断です。一つの会社であり続けることは、これからの稼ぎが救済金にあてられることになり、勘定を分ける必要がありました。夢を売るタレント事務所という性質から言っても、切り分けは当然の流れでした。 ただし、これまでジャニーズ事務所にいたスタッフを皆、そのまま新会社に移籍させることも好ましくはありません。 現在、企業には、サプライチェーンマネジメントに関しては人権問題を重視し、その解決をはかり対処方法などを継続的に調査・情報開示する「人権デューデリジェンス」が求められています。現在のスタッフには、人権意識のチェックをした上で、性加害問題について当事者ではないことや二度と起こさないという誓約をしてもらう必要があるのではないでしょうか。 企業の名称についても、存在意義と果たすべき使命及び目的を明らかにして、設置にかかわる適格者はじめ、資本提供を行う株主が責任をもって決めるのが当然です。これが今後、デビューするグループの名称をファンから募るならいいのですが、性加害問題から再出発しようとする今、名称すら自分たちで考えないというのは、現執行部として、いかにガバナビリティー(統治能力)がないかを証明しているように思えます。 補償額についても、救済委員会に丸投げをしているのも気になりますね。前回の会見同様に、今回も「法を超える判断」との方針も示していますが、金額については救済委員会からの提案をもとにするとも述べています。 しかし、法律家のみで構成されている救済委員会ですから、基本的には過去の判例や法的な判断を基礎として、被害者の立場からすれば、極めて少額の補償額が提示されるように思われます。 被害者に対する補償金がどのくらいの金額になるかはわかりませんが、海外であれば、数百億円規模になるとの見立てもあるようです。さらに、事務所として被害者に対する補償をした上で、今後、もし残余財産があれば、人権団体などに全額寄付をすることも考えるべきでしょう。 【プロフィール】 八田進二(はった・しんじ) 会計学者。青山学院大学名誉教授、大原大学院大学教授、金融庁企業会計審議会委員、第三者委員会報告書格付け委員会委員など。著書に『「第三者委員会」の欺瞞 報告書が示す不祥事の呆れた後始末』(中公新書ラクレ)など多数。

弁護士ドットコムニュース編集部

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