新築分譲マンションの価格が高騰しています。不動産経済研究所(東京)によると、東京23区の2023年の平均価格は初めて1億円を超えました。なぜ価格が上がっているのか。なぜ需要は落ちないのか。「LIFULL HOME’S総研」チーフアナリストの中山登志朗さんに聞きました。
■背景にトリプル高
-ここ10年で全国の新築分譲マンションの平均価格は約4割上昇し、東京23区に至っては約2倍になっています。なぜこんなに高騰しているのでしょうか。
「一番大きな要因はコストプッシュ(生産コストの上昇)です。地価、人件費、資材価格のトリプル高が住宅価格を押し上げています」
-確かに近年、地価は上がり続けています。
「1990年代のバブル崩壊で下がり続けていた地価が、アベノミクス以降、緩やかに上昇しました。マンション用地となる土地の価格が上がっているというのが、まず要因として挙げられます」
-人件費の上昇とはどういうことですか。
「マンション建築に従事する建設業、運送業が、近年は深刻な人手不足に陥っています。高齢化が進み、そういった業種に若い人が就かないため、解消されていません。人手が足りないと人員を集めるのにコストを払わないといけない。人件費は年間10%くらい伸びています」
■ウクライナ侵攻も影響
-資材価格の高騰の背景には、どんなことがあるんですか。
「(2022年の)ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにした円安の進行は、大きなポイントになりました。同時期に欧米が政策金利の引き上げを始めたことによって、欧米と、金融緩和を続ける日本との金利差が広がりました。円を売ってドル、ユーロを買うという動きが進み、急速に円安が進みました。建築資材は輸入に頼っている部分が大きく、どんどん値上がりしました」
■需要が落ちない「最大の要因」
-日本の金利の低さが影響しているんですね。
「超低金利は、買う側にも影響しています。住宅ローンの金利が低く抑えられます。さらに住宅ローン減税があるので、新築の場合は13年間で500万円近くが返ってくるケースもあります」
「マイナス金利が解除になりましたが、短期金利の上昇は極めて低く、安定的に抑えられています。住宅ローンの変動金利は、一部のネット銀行などでごくわずかに上がったのを除けば、上がっていません。超低金利で、しかも住宅ローン減税制度が充実していること。これが価格が上がっても、新築マンションの需要が落ちない最大の要因になっています」
■大手による市場の寡占化も
-建築コストが上がり、デベロッパー(不動産開発業者)の淘汰(とうた)が進んでいると聞きました。
「大手デベロッパーによる市場の寡占化という状況は続いています。大手7社は『メジャーセブン』という名で連携もしています。こういった大手が、高額物件を作っても売れる東京都心部に、マンションを供給しています」