新興SNS「スレッズ」は「X」に勝ち目なし? ブームはなぜ沈静化したのか

イーロン・マスクがまた、マーク・ザッカーバーグと一戦交えるのではないかという話を蒸し返している。 【画像を見る】マーク・ザッカーバーグ氏とスレッズの詳細(全4枚)  米CNNによれば、「米実業家イーロン・マスク氏は、米メタの最高経営責任者(CEO)、マーク・ザッカーバーグ氏との間で予定している総合格闘技での対決を、自身が所有するSNS『X(旧ツイッター)』でストリーミング配信すると予告した」という。  ことの発端は、ザッカーバーグがX(旧ツイッター)のライバルとなるSNSのスレッズを立ち上げるのに際して、それを知ったマスクが挑発ツイートを行ったことだった。ザッカーバーグが柔術にハマっているのは以前この連載でも取り上げているが、マスクは格闘技で勝負しようと提案した。ザッカーバーグも6月にそれに応じる返答をしたことで、大きなニュースになった。  その後動きはなかったが、今回またマスクが挑発を開始したというわけだ。これを受けてザッカーバーグは「こちらから8月26日を提案したが、確認の返事はない」とスレッズに書き込み、それでもマスクが本気ではないとして「もうこれで終わりにしよう」と投稿している。するとマスクは「戦いは終わっていない」と再び投稿し、堂々巡りが続いている。

スレッズに勝ち目がない可能性

 もっとも、これがXとスレッズというライバルSNS(マイクロブログ)の勝負の「代理決戦」ならば、もはや両者は戦う必要はない。なぜなら、スレッズには現時点ではすでに勝ち目はなさそうだからだ。  スレッズは7月5日に公開された。すると大手SNS企業が新しいSNSを立ち上げたことで大きな話題になり、サービス開始から5日で1億ダウンロードを記録した。  ところが、その熱狂はあっという間に鎮まったようだ。ダウンロード数は1億5000万を超えたとの報道もあるが、マーケティング情報を提供する米センサータワーの情報によると、10日ほどでエンゲージメント(ユーザーがスレッズを使う時間)が50%も低下し、7月31日時点で1日の利用者数が82%も減少しているという。

スレッズへの移行メリット薄い

 この敗因はどこにあるのだろうか。まずはスレッズでなければいけない理由がなかなか見えないことだ。旧ツイッターを離れた人を惹きつけるにも、そこで親しまれてきたタグのような機能もないし、投稿検索もない。  PCのブラウザで使えるようになったのもつい先日のことで、今後、さらにツイッターに寄せていくことになり、ハッシュタグのような機能も提供すると述べているが、それもまだ先になりそうだ。使用感もインスタグラムとあまり違いはないように感じるし、なぜスレッズなのかが分からない。  「これでなければいけない」理由がないというのは、メタが力を入れてきたメタバースにも当てはまる。値上げしてさらに高価になったVRヘッドセット(4万7300円から)を装着して使用する必要があり、例えばリモート会議を行うにもわざわざアバターを作って、重いヘッドセットを使う必要がある。  そもそも日常的に使うようなものではなく、米ITスタートアップの関係者が以前私に「これを普及させるのは難しい」と述べていたくらいだ。

Instagramユーザー数世界一「インド」で伸び悩み

 スレッズに話を戻す。あまり使う理由がないスレッズだが、スタートダッシュは衝撃的だった。もっとも、スレッズのダウンロード数が公開後すぐに爆発的な伸びを見せた裏には、ある意外な国の存在があった。インドだ。  そもそもスレッズは、米メタが提供するインスタグラムと紐づけられている。このため、インスタグラムのアカウントを持っている人であれば新規登録の作業も必要なく、あっという間に簡単にアカウントを作れてしまう。事実、スレッズのダウンロード数はインスタグラムのユーザーが圧倒的に多い。  そしてインスタグラムの登録者数を国別に見ると、インドが圧倒的に多いのである。その数は2億3000万ほどで、2位は米国で1億4000万人となっている。  インド人はスレッズのユーザーの約32%、全ユーザーの3分の1を占めている。だがそのインド人がこのアプリにハマらなかったことで、利用時間も減り、登録者数も頭打ちになった。彼らのニーズに応えられていない可能性が高い。

Xは収益化開始 スレッズ勝利の鍵は独自機能か 

 Xは、マスクがさまざまな仕様を変えるなどして混乱を生んできたが、実際はユーザー数を伸ばしている。マスクは7月28日に投稿し、グラフを示して、Xのユーザー数が世界で過去最高の5億7000万人になったと明らかにしている。  しかもXの国ごとのユーザー数を見ると、1位の米国、2位の日本に次いで、3位のインドには2700万人の利用者がいるとされる。そしてこの数は、これからも増加していく気配がある。  主な理由は、Xの収益化だ。世界中で人気のアカウントを対象に、Xから広告収益を分配するようになっている。2月に事業を発表した際には開始時期が明らかになっていなかったものの、8月に入り、突如始まったことでインドで大きな注目を浴びている。  日本でも2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の管理人を務めていた、ひろゆきこと西村博之さんが約36万円の広告収益の振り込みがX側からあったと投稿し、話題になった。  スレッズが新たな独自の注目機能でも発表しない限り、現時点では、スレッズに勝ち目はなさそうだ。

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