旅をしながら仕事はできる? 新しい働き方に活かせる4つのヒント

2013年の6分の1にあたる、約2カ月間。私は、旅をしながら仕事をしました。
日本国内のみですが、自転車を移動手段に走行距離は約3000キロの一人旅。目的のひとつには、旅の間も仕事をすることで、自らをこれからのワークスタイルの実験台にしようというアイデアがありました。
今回は新しい働き方に興味がある方や、同様のチャレンジをする方の参考になるように、その旅に出る前や旅中に感じたことをご紹介します。
ポイントは4つ。
時間で働くのをやめる シンプルを追求する 基礎を大切にする(守・破・離) 好奇心にしたがい、自ら選択する
「旅をするなら仕事のことを忘れて楽しみたい!」…という気持ちもありますよね。私も、そんな旅は大好きです。でも、今回は「行きたいところはいっぱいあるけど仕事を休めない…」といった課題や、「旅をしながら収入も得たい!」といった願望など、少しでもそんな想いを抱いたことのある方へのヒントをお届けします。
1.時間で働くのをやめる
私がまず変えたのは、「時間=給料」という考え方です。
朝9時に出勤して18時まで働き、時には残業をする。社会人にとって当たり前に思えるスタイルですが、労働に費やす「時間」を企業やお客様に提供することが給料になっている場合も多くあります。結果的に、自分の時間を自由にコントロールするのは難しくなるでしょう。
あえて株やFX、アフィリエイトなどを紹介することはしません(それも方法のひとつですが)。本業を辞めずに旅をしたかった私は、ライターという仕事に加え、自分でも会社を経営することで、いつ・どこでも働けるスキルを身につけたり、仕組みをつくることを優先しました。
これからの時代、「作業」のような仕事は、海外の安い人件費やITに置き換わっていきます。そのとき「時間」以外で価値を提供してくことが必要だと思います。
具体的な例を紹介しましょう。
・営業をしない
自社サイトへの問い合せや関係者からの仕事の紹介はもちろん、ブログやソーシャルメディアを通じて、24時間365日仕事の依頼がくる環境をつくっています。
・オンラインで完結する
旅の間は特にITを活用し、オンラインのみで仕事を進めることも多くありました。自転車旅では、日中に走り、宿を見つけ、晩ご飯を食べてから寝るまでの間と早朝に仕事をするスタイルが基本です。その途中で関係者やお客様とミーティングが必要な時は、全てWeb上の動画チャットで完結しました。
また、Web上で受注した案件を海外にいるライターやデザイナーに夜依頼し、次の日の朝や昼にはできあがるようなこともありました。海外との時差も活用すると、時間のコントロールはさらにスピード感を増します。
・仕事に集中できる時間を意識する
正直に言うと、労働時間そのものは決して短縮できたわけではありません。しかし、平日でも1時間くらいしか稼働しない日もあります。さらに1年単位でみると、2カ月くらいは旅に出たり、違うプロジェクトに打ち込む余裕時間を設けることも大切だと思っています。集中できる時にしっかり集中するには、仕事に期限を設ける「プロジェクト意識」を常に持つのが有効です。
・お金を働かせる
自分の自転車旅の応援チケットを販売し、購入額によりメルマガや現地からお土産を送るECサイトをつくったり、旅の間「空き部屋」状態になる自宅をWebで紹介し家賃収入を得たり、企業スポンサー(食料や宿、情報提供など金銭以外のサポーター)を募ったりもしました。自転車で走っている間もお金が働いてくれる仕組みも少し構築することで、お小遣いの足しにしました。
※東京~北海道まで1ヶ月自転車旅をした際の売上報告はブログにて(【旅×仕事+自転車】ほぼ毎日50キロ以上走りながら、売上87万円)。
2.シンプルを追求する
旅に出る前、そして旅の間は、とにかく選択の連続です。
何を食べる、どこに行く、何時に寝る…。楽しむことに頭をフル回転させている状態で、プラスアルファで仕事を考えるのは容易なことではありません。そのため、物事を「シンプル」にすることも大切です。
シンプルを追求するのは、複雑にするより難しいです。たとえば、仕事を依頼された際、私は全てを請けるわけではありません。具体的には、以下のような判断の軸を持つようにしています。
自分のパフォーマンスを発揮できるか 利益率は高いか 将来のビジョンにマッチしているか スケジュールの調整が柔軟にできるか 仕組み化して対応できるか
しかし、これでも旅をする上では多く感じます。そこで旅の間は、自分の強みを発揮できる案件を、少ない関係者で効率良く回すことにフォーカスするようにしています。これだけでも、旅中の混乱は減りました。
旅の「目的」をシンプルにするのもオススメです。多くの目標をもつこと(=複雑にすること)で、そもそもはじめの一歩が踏み出せないことは多くあります。
※旅によって掲げる目標は違いますが、2013年の旅のテーマは「旅と仕事は両立できるかを実験すること」でした。その目標がないと行動の軸がぶれて、仕事はそこそこに遊んでいたと思います…。
3.基礎を大切にする(守・破・離)
ノマドスタイルに憧れてカフェなどで仕事をしている方を多く見かけます。私も普段から、どこでも仕事ができる体制づくりを意識しています。しかし、ワークスタイルはあくまで方法論です。働き方自体を目的にすることで本当に質の高いアウトプットができているかというと、正直疑問が残ります。
「守・離・破」という言葉をご存知でしょうか?
これは日本の茶道、武道、芸術等における師弟関係のあり方のひとつ。まずは師匠に言われた型を「守る」ところから修行がはじまり、その後、自分に合った型をつくることにより既存の型を「破る」。最終的には型から自由になり、型から「離れ」て自在になれることをいいます。
私自身、ライターとして800社以上の企業を取材をした経験がありますが、新しい働き方に取り組む企業や個人であっても、その「自由」はしっかりとした基礎スキルの上に成り立っていることがとても多いです。一見、派手な部分がクローズアップされがちですが、働き方の本質はそこにはない場合も多いのです。
基礎スキルや経験を磨いてこそ、それを掛け合わせて独自性を生み出すことができます。私の場合はライターとしてのスキルや、どこでも仕事ができるというスタイル、自転車という趣味(そして、たぐいまれな方向感覚や人並み以上の体力!)。ひとつひとつを取り上げれば私より長けた方も数多くいますが、それを掛け合わせることで、日本全国を自転車で旅をしながら仕事をするという独自のスタイルを見つけました。
4.好奇心にしたがい、自ら選択する
仕事のやり方にも新しい挑戦をするにも、ヒントはあっても正解はありません。
海外で自転車旅行をしたこともありますが、仕事をしながらだともっとリスクがあっただろうと感じますし、今まで挙げた旅のヒントも全ての方におすすめできる方法ではありません。とはいえ、旅をしている最中に正解だったなぁと感じたことがひとつだけあります。
それは、自分の好奇心にしたがい、自ら挑戦することを選択したこと。
仕事も旅も、大きく言えば人生も、困難を克服したところに達成感だったり喜びがあったりします。しかし、その一歩を踏み出す勇気や、あきらめないで続ける気持ちを持つことは、自分で選んだか否かが大きく左右すると思います。
夜、誰もいない真っ暗な峠を自転車で越えている時などは「何でこんなバカなことしているんだろう?」と自問自答することもありました。もし、誰かに指示されてやっていたら旅の途中で心が折れていたかもしれません(笑)
その行動はコンテンツになるか
最後に、私が自分で何かを選ぶ時の方法をひとつ紹介します。それは、「その行動はコンテンツになるか?」ということ。具体的には、その選択をした自分はもちろん、その話を聞いた方もワクワクしたり、楽しんでもらえるか…といった要素があるか否か。
そのようにして選んだ挑戦は多くの場合リスクも大きいのですが、失敗しても死ななければお酒の席のいいネタになります(もちろん、成功したらもっといいネタになります!)。
挑戦を楽しみましょう。
(松田然/合同会社スゴモン代表・兼ライター)

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