旅行会社に“神風”吹く? 南ア応援ツアー緊急追加受け付け

 W杯日本代表の初戦勝利が、日本にとどまる多くのサポーターの心を揺り動かしている。勝利翌日の15日以降、観戦ツアーを企画する旅行各社に観戦ツアーの問い合わせが相次いでいるのだ。各社ともすでに全ツアーの申し込みを締め切っているが、もともと売れ行きが絶不調だっただけに、“スクランブル態勢”で緊急申し込みに対応しているという。
 すべての観戦ツアーの申し込みを締め切っているJTB法人東京には、15日朝から問い合わせが急増。関係者によると、W杯関連ツアーの予約は1300人分の仕入れに対し半数程度にとどまり、同社はすでに航空会社に座席を返還しているが、急きょ追加受付を決めた。オランダ戦の弾丸ツアーは出発前日の17日正午に締め切ったが、24日のデンマーク戦は、通常のツアーを18日正午まで受け付ける。
 「カメルーン戦の弾丸ツアーは定員の約3割、オランダ戦も半数程度の申し込みにとどまり、収支は損益分岐点を大きく割り込みました。最後の頼みのデンマーク戦に弾丸ツアーはありませんが、ホテルやチケットの追加手配は問題なく、航空座席さえ整えば申し込みを確約できます。カメルーン戦の勝利が、W杯ツアー全体にとって“神風”になることを祈るばかりです」(前出の関係者)
 一方、事前仕入れを300人分にとどめ、手堅く8割以上を埋めた日本旅行にも「今からツアーに参加できるか」という問い合わせが十数件あった。同社は「すでにお申し込みいただいたお客さまへのフォローを最大限手厚くするためにも、新たなツアーの設定は行いませんが、新規の問い合わせやご相談にはフレキシブルに対応します」(広報)としている。
 今回の南アフリカ大会は、「世界最悪」といわれる現地の治安の悪さと、弾丸ツアーでも約40万円という高額な旅行代金が敬遠されて軒並み不人気だった。初戦で日本が勝ったからといって、この悪条件は変わらないが、「日本の劇的勝利が、現地に行きたいけれど決心がつかなかった“ボーダーライン”の人たちの背中を押したのではないか」と鈴木勝・桜美林大教授(国際ツーリズム振興論)は語る。
 「日本人の旅行心理に最もブレーキをかけていた要素は治安でしたが、熱気にあふれるスタジアムの雰囲気や、意を決して出向いたサポーターたちの熱狂、旅行会社の安全対策を冷静に見たことで、多くのサポーターの心が揺り動いているのでしょう」
 南ア大会に向け、旅行各社は過去最高レベルの安全対策をとっている。カメルーン戦と打って変わって、オランダ戦やデンマーク戦で“ジャパンブルー”がスタジアムを席巻すれば、サムライジャパンにとってこれ以上の追い風はないだろう。

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