日仏首脳会談:原発輸出促進へ協力 共同声明

安倍晋三首相は7日午前、来日したフランスのオランド大統領と首相官邸で会談し、原発輸出など原子力分野での協力強化を柱とした共同声明を発表した。5月にトルコへの原発輸出で三菱重工業と仏企業アレバが共同で優先交渉権を得ており、ヨルダンなどの新興国を念頭に、両国で共同して輸出促進を図る狙いがある。原発輸出への日本政府の積極姿勢をより鮮明にした。
 安倍首相は会談後の共同記者会見で「世界の安全水準を一層高める観点から、日本の原子力技術への期待に応えていく。その意味で日仏は世界最高のパートナーだと確信している」と述べた。
 両首脳は、第三国への原発輸出に向けた協力を声明に明記。次世代炉の開発など原発の安全性強化を優先課題として取り組むことを確認した。東京電力福島第1原発の廃炉でも協力する方向だ。
 使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)の操業開始に向けた技術協力も盛り込み、再処理工場を管理する日本原燃とアレバ間で、再処理工場の操業開始に向けた覚書も交わされた。ただ、工場が完成するめどは立っていない。
 また、両首脳は、中国を念頭に「新たな大国の台頭に伴って生じる新たな課題に対処する」ため、民主主義など共通の価値観を通じて連帯することで一致。航行の自由の維持など、太平洋地域の平和と安定のための協力強化を確認した。
 安全保障の分野では、日本が2011年、武器輸出三原則を緩和したことを踏まえ、防衛装備品の共同開発に向けた協力や輸出管理に取り組むことで合意した。日本が武器輸出三原則の例外としている米国を除き、この分野で協力を進めるのは英国に続き2カ国目になる。
 こうした課題について協議するため外務・防衛の閣僚級会合を早期に開き、今後、定期協議(2プラス2)への格上げも検討する。仏企業がヘリコプターの艦着装置に使える部品を中国に売却していたことを踏まえ、日本側には中国の軍備強化を防ぐ狙いがある。
 このほか、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)の交渉促進▽中東、アフリカにおける日仏両国民・企業の安全のための情報交換▽国連安全保障理事会での日本の常任理事国入りに対するフランスの支持--も共同声明に明記。今後5年間に両国が取り組む具体策をまとめたロードマップも併せて発表した。
 前仏大統領のサルコジ氏は中国寄りとされたが、オランド氏は対日関係も重視しており、日本は関係強化のためシラク氏以来、仏大統領を国賓として17年ぶりに招いた。【影山哲也】

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