日光浴の不足で怖~い骨の弱体化 在宅勤務で懸念されるビタミンD欠乏

 風薫る5月。慎重に「3密」を避けながら外に出よう。テレワークによって巣ごもりの時間が長くなると、骨が弱体化する病気が懸念されるからだ。メンタルヘルスの管理などで活躍する産業医、シンコ先生(矢島新子)は顧問先の相談でその前兆に遭遇し始めている。

 一例はIT企業の従業員とのビデオ面談でのことだ。

 「パソコン上の画面から、面談相手の従業員の背景をよく見ると午後2時だというのに、その方の後ろは淡い色のカーテンが閉められたままでした」

 カーテンはテレビ会議の時だけなら問題はない。しかし、自宅にこもって朝の太陽光を浴びないと、体内時計が狂って夜眠れなくなり、睡眠覚醒リズム障害に陥ることがある。1日を通じて日光をほとんど浴びないと、体内で生成されるビタミンDが欠乏し、別の恐ろしい病気が待っている。

 「ビタミンDが欠乏すると、小児では骨の石灰化障害をもたらす、くる病が発症しやすくなります。成人では骨折や骨粗鬆(こつそしょう)症を引き起こす骨軟化症になる恐れがあります。どちらも、とても怖い病気です」

 なぜ骨に影響するかは、「ビタミンDは腸からのカルシウムとリンの吸収に必要なビタミンで、これが不足するとカルシウムもリンも吸収されなくなって、血液では低カルシウム・低リン血症という状態になります」と説明する。

 近年、紫外線の悪い面ばかりが強調され、日焼け止めをつけ、日傘をすることが習慣となっている。「在宅勤務となった人は日焼けよりもビタミンD減少の方が問題になります」とシンコ先生は警告する。

 関連して、日光はビタミンD生成だけでなく、ウイルスを不活化する可能性についても紹介する。

 米政府は4月下旬、新型コロナウイルスが太陽光によって急速に不活性化するとの研究を公表した。米国土安全保障省長官の科学技術顧問、W・ブライアン氏によると、太陽光には、物質の表面に付着したウイルスと空気中を飛散するウイルスの両方を不活性化する働きがあるという。

 一方、インドネシアでは、上半身裸になって日光浴する人が続出している。日光によって体内で生成されるビタミンDが新型コロナウイルスを不活化するとの情報がSNSで広がり、この現象が巻き起こったという。

 新型コロナウイルスは外側の形状が太陽のコロナに似ていることから、この名称が付いたとされる。名称に由来する太陽光に弱いとの米国の研究が事実かどうかは、夏になれば証明されるかもしれない。

 話を現実に戻すと、ビタミンDは日ごろの食事でも補うことができる。ビタミンDを多く含む食品には魚類(サケ、サンマ、イワシなど)、キノコ類(キクラゲ、干シイタケなど)、野菜(コマツナ、ホウレンソウ、モロヘイヤなど)のほか、納豆や干しワカメなどがある。

 「テレワークにより、日に当たることがめっきりなくなったという人は骨の健康のためにカーテンを開け、外に出て日光を浴びるようにしましょう」

 日光浴と食事での補給もすれば、ビタミンDの生成は万全だろう。 (佐々木正志郎)

 ■矢島新子(やじま・しんこ) 産業医。山野美容芸術短期大客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。パリ第一大(ソルボンヌ)大学院、東京医科歯科大大学院博士課程修了。医学博士。著書に「ハイスペック女子の憂鬱」(洋泉社)ほか。

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