日本が途上国援助(ODA)で約10年前から支援してきたミャンマーの基幹鉄道の改修事業が大幅に縮小される見通しであることが分かった。
2021年の国軍のクーデターを踏まえて日本側が昨秋、事業を進めるのに必要な追加の円借款を出せないと通告。国軍も4月までに資金支援の打ち切りに同意した模様だ。
【地図】日本がODAで改修を支援してきたミャンマーの鉄道路線
日本のミャンマー支援を象徴する大規模プロジェクトで、インフラ事業の海外展開の一環と位置づけられていた。国軍の圧政の長期化で、他の大型ODA事業も見直しを迫られる可能性がある。
事業は最大都市ヤンゴンと中部マンダレーを結ぶ約620キロメートルの路線。レールや橋の老朽化が進み、列車の遅延や脱線事故が起きていた。
ミャンマーが11年に民政移管した後、日本は円借款の再開と様々な事業への協力を表明した。鉄道改修事業は13年に実現可能性の調査が始まり、18年に着工。軌道や橋、信号システムなどの改修や更新が進められてきた。
日本はまず最大約1422億円の円借款を供与することで、20年までにミャンマー政府と合意。完成予定の24年ごろまで事業の進み具合に応じて融資し、必要であれば追加の円借款も見込んでいた。
日・ミャンマー外交関係者によると、昨年11月、日本政府が国軍側に「追加の円借款の検討は難しい。新型コロナウイルスの感染拡大や治安情勢の悪化、急激な円安ドル高などのため、工期の延長や追加の資金が必要となっている」と、一部工事の取りやめを含む計画の全面見直しを通告した。
日本はクーデター以降、ミャンマーに新規の円借款を見送る方針をとってきた。軍事政権を「政府」と認めることになるためだ。今回の事業見直しで、クーデター前からの「継続事業」でも、追加融資のための新規契約はしないことがはっきりした。
今回の事業は円安ドル高などの影響で、日本が当初約束した金額では資金不足となり、滞っている改修もあるという。改修を終えたのは全体の約4分の1とみられる。日本は上ぶれ分についても支援しない方針だ。(織田一、加藤あず佐)