(ブルームバーグ):国内コーヒー市場が沸いてい る。けん引役は コンビニエンスストア店頭で豆からひいたいれたてコーヒー。1杯100 円からの低価格で本格的な味わいを楽しむことができ各社の販売は好 調。一時は成熟したとも言われた国内コーヒー市場が盛り返している。
「価格の下げ圧力が強い中、普通であれば低価格、低品質なものに に走りがちだが、きちっと日本品質のものを作り上げたところが受け入 れられた」。輸入されるコーヒー生豆の約3割を取り扱う丸紅の梶原和 幸飲料原料部長はコンビニコーヒー好調の要因をこう分析する。「1ド ル以下でちゃんとしたコーヒーが飲める国は世界でもあまりない」。
全日本コーヒー協会によると、国内コーヒー消費量はコンビニでの いれたてコーヒーが広がり始めた2013年に前年比4.3%増の44万6392ト ンと6年ぶりに過去最高を記録。昨年は0.8%増の44万9908トンと、2 年連続で過去最高を更新した。
セブン-イレブン・ジャパンを展開するセブン&アイ・ホールディ ングスは前期(15年2月期)のいれたてコーヒーの販売が前の期に比べ て56%増の7億杯、売上高で約735億円に達した。新たに発売したアイ スカフェラテが後押しすることなどから、今期(16年2月期)は同21% 増の8.5億杯、同900億円の販売を計画している。
セブン-イレブンの1万7600店舗で、1店舗当たり1日平均120杯 以上が注文されていることで大量仕入れが可能となり、高品質なコーヒ ー豆の供給を実現させている。同社広報センターはメールで説明した。
同社は13年からセブンカフェを展開。ドリップ方式のコーヒーマシ ンを富士電機と開発した。「おいしいコーヒーをお客様に提供したいと いうところからスタートした」。セブン-イレブン・ジャパンの鎌田靖 常務執行役員商品本部長は6月19日の新商品の発表会見で振り返った。
2ケタ成長で伸びる
今回投入を決めた新商品のアイスカフェラテは濃縮ミルクをビーズ 状のアイスに特殊加工したものを氷とともにカップに入れておき、そこ に熱いコーヒーを入れるという仕組み。江崎グリコと1年半以上の打ち 合わせを経て、新しい製法を確立したという。
鎌田氏は「基本的に味を探求していく。お客様のニーズを取り込ん だメニューができれば今後も2ケタ成長で伸び続ける」と語った。
コンビニ2位のローソンの吉澤明男・商品本部本部長補佐は「三菱 商事と原材料から入り込んで農園との関係を築き、相場に左右されない 安定供給に取り組んできた」と話す。筆頭株主で、海外のコーヒー農園 にも出資する三菱商事との連携で「コーヒー生豆の高騰という局面にお いても安定した品質と価格を維持できる」と強みを語る。
ローソンの1店舗当たりの平均販売杯数は現在1日当たり百数十杯 程度。広報室の李明氏によると6月に新商品を販売し、夏にさらに品揃 えを増やすことで販売杯数の増加を見込む。約1万店舗で販売する。 ファミリーマートも前期(同)の1店舗当たりの1日当たりのいれ たてコーヒーの平均売上高は、約9000円と前の期に比べて6割増加。広 報室の高岡夏氏によると今期(同)は1万円への拡大を計画する。
国際機関トップも「おいしい」
日本は米国、ドイツに次ぐ世界3位のコーヒー生豆の輸入大国。丸 紅の梶原氏によるとコンビニでのいれたてコーヒーは国内のコーヒー生 豆需要全体の1割弱を占めるという。価格のより安いコーヒーから高価 格のコーヒーまで様々な消費者層が育ってきているとして、今後も国内 のコーヒー需要は年間2%程度は伸びていくとの見方を示す。
「おいしい」--。国際コーヒー機関(ICO)のシルバ事務局長 が昨秋来日した際、宿泊した都内ホテル近くのコンビニでコーヒーを注 文したところ、こう感想を述べて飲み干したという。同行した全日本コ ーヒー協会の西野豊秀専務理事が明かした。コーヒーの生産・消費大国 であるブラジル出身の同氏も認めるコンビニコーヒーの味。
調査会社の富士経済によると14年のコンビニでのいれたてコーヒー の市場規模は、前の年と比べて48%増の1500億円。15年は同17%増 の1759億円への拡大を見込む。