日本でコロナ死亡者が少ない理由「1月中旬に集団免疫獲得」説

日本政府の新型コロナウイルス対策については、批判的な声も多いが、一方で死亡者が少ないのは事実である。5月19日現在で、日本で新型コロナによって死亡した人数は763人になる。

 人口100万人あたりの死者数に換算すると、スペイン587人、イタリア523人、米国268人、ドイツ96人に対して、日本はわずか6人であり、先進国のなかで圧倒的に少ない。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」からこれまで、日本の政府の新型コロナ対策は後手に回り、悲観的に捉えられてきた。しかし、犠牲者を最小限に抑えるという最大の目的は果たしている。ただ、その理由は、実際のところよくわかっていない。

 日本はウイルス感染の有無を調べるPCR検査数が世界のなかでも圧倒的に少なく、集中治療室(ICU)も充実していない。世界各国が不思議がるなか、「日本人はすでに集団免疫を獲得している」という新説が登場した。

 その説は、京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授らが唱えたものだ。カギとなるのは新型コロナのうち、「K型」と「G型」という2つの型だ。全国紙科学部記者はこう語る。

「簡単にいうと、日本ではまったく無自覚のうちに、1月中旬に中国発の弱毒性『K型』が流行のピークに達したということです。中国からの厳密な入国制限が3月中旬までもたついたことが幸いし、中国人観光客184万人を入国させ、国内に『K型』の感染が拡大して集団免疫を獲得したとされます。

 一方、欧米は2月初頭から中国との直行便や中国に滞在した外国人の入国をストップしたので、国内に弱毒性の『K型』が蔓延しなかった。その後、上海で変異した感染力や毒性の強い『G型』が中国との行き来が多いイタリアなどを介して、欧米で広がったとされます。

 日本はすでに『K型』の蔓延によって集団免疫を獲得しており、『G型』の感染が拡大しなかった。だから日本の死者数が少ないという説です」

 これに対し、国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんは、「仮説としては非常に優れている。今後の実証実験に期待したい」と話す。

◆「免疫パスポート」は経済を回す上で必要

 そうした説が登場するのも、この先、新型コロナと共存するキーワードとなるのが、免疫であるからだ。現在、世界各国の政府や企業、団体は、「免疫パスポート」の発行の準備を進めている。

「免疫パスポートとは、新型コロナに感染して免疫ができたことを証明する書類やパスなどのことです。経済活動の再開を目指す各国では、検査をして抗体があった人に証明書を与えて、就労や移動の自由などを認める動きが出てきています」(前出・全国紙科学部記者)

 ドイツでは、ドイツ感染症研究センターなど複数の研究所が免疫パスポートの発行を提案している。またイギリス政府は検査で抗体が確認された人に証明書やリストバンドを発行し、外出制限を解除していく方向を考えている。

 フランスでは、IT企業が感染リスクのない観客だけがスポーツを観戦できる、スポーツイベント用の「免疫パス」を開発中だという。そうした免疫パスポートには賛否の声があがる。

「WHO(世界保健機関)は、“抗体の効果がいつまで続くかは不明”として免疫パスポートという考え方に注意を呼びかけています。また免疫を持つ人と持たない人を区別することは差別にもつながり、倫理上の問題もあります。

 一方で、経済活動を再開するには現実的に必要との声もあります。出入国の際は相手国から文字通りの『免疫パスポート』を求められる可能性もあります。そもそも子供が学校に入学するときには、はしかやポリオの予防接種を受けた証明書が必要なケースもあるので、“新型コロナも同じではないか”との意見もあります」(前出・全国紙科学部記者)

 日本はどうだろうか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは賛成の立場だ。

「日本でも即刻導入すべきです。抗体検査や、それを持つ人への免疫パスポートの発行という制度は、経済を回すという意味においても重要です」

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