日本とEU、半導体連携強化で覚書締結へ…供給網混乱回避へ早期警戒メカニズム構築

日本と欧州連合(EU)は、半導体分野での連携を強化する覚書を締結する。関連物資の不足によるサプライチェーン(供給網)の混乱回避に向け、迅速に情報共有する「早期警戒メカニズム」の構築が柱だ。中国との先端技術競争でカギを握る半導体分野でのネットワークを拡大し、経済安全保障の強化を図る狙いがある。 【図表】日本とEUが締結する、半導体協力に関する覚書のポイント

 複数の日本政府関係者が明らかにした。

 西村経済産業相が4日、来日するEUの執行機関・欧州委員会のブルトン委員との間で覚書に署名する予定だ。

 同メカニズムは、情報を共有することで、早期に適切な対応を取り、供給網への影響を食い止めるための枠組みだ。情報共有の仕組みは共同で開発する。

 半導体は、パソコンや自動車など多くの製品に欠かせない。しかし、日本は国内需要の多くを台湾など海外からの輸入に依存している。新型コロナ禍では、供給網の混乱などで半導体が不足し、国内の自動車メーカーが減産を余儀なくされる事態が起きた。

 このため、政府は昨年、経済安保推進法を成立させ、国内への安定供給を図る「特定重要物資」の一つに半導体を指定した。経産省は、国内の半導体関連企業に財政支援を行うことも決めている。

 覚書には、次世代半導体の研究開発や人材育成での協力も明記する。協力体制を確立し、長期的で持続可能な関係作りにつなげる狙いがある。日本は、次世代半導体の国産化を目標とする「ラピダス」が2ナノ・メートル(ナノは10億分の1)世代と呼ばれる最先端半導体の生産を目指している。最先端半導体は、人工知能(AI)やスーパーコンピューターに用いる想定だ。新用途の創出に向けた協力方針も盛り込む方針だ。

 安保、経済両分野での競争力に直結する半導体は、米中が技術覇権を競っている。日本政府は、米国との協力関係を深めており、5月には、日米両政府が共同で次世代半導体開発に関するロードマップ(工程表)を策定することで合意した。日本政府は、米国だけでなく、EUとの関係も強固にすることで、国際的な競争力の向上を図る必要があると判断した。

 EUは4月、域内での半導体製造や研究開発の支援策を盛り込んだ「欧州半導体法案」に合意し、2030年までに官民合わせて約430億ユーロ(約6・7兆円)を投じる方針を決めている。

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