すしがベルトコンベヤーで店内を回ってくる日本の回転ずしは世界的に有名だが、そこで不衛生な迷惑行為を行い、ソーシャルメディア(SNS)にその画像を投稿して話題になろうとする、いわゆる「すしテロ」と呼ばれるようになった行為が、回転ずし店を脅かしている。その中で愛知県警は8日、そうした迷惑行為を行ったとして、3人を逮捕したと発表した。
県警は、回転ずしチェーン「くら寿司」の名古屋栄店で2月3日にしょうゆ差しのつぎ口をくわえるなどした上、その動画をSNSに投稿したとして、住居不定・無職の吉野凌雅容疑者(21)を威力業務妨害容疑で逮捕した。ほかに、19歳と15歳の男女も逮捕したという。
捜査関係者によると、3人は容疑を認めており、1人は「申し訳ないことをした」と供述しているという。
日本では今年1月、回転ずし店「スシロー」で、男性が備え付けのしょうゆボトルや湯飲みをなめたりする動画がインターネットで拡散したのを機に、レーン上の更に唾液をつけるなど、似たような迷惑行為の動画投稿が相次ぎ、広く懸念されている。
2月に浮上した動画では、利用客の1人が別の客のすしに大量のわさびをのせて、回転レーンに戻していた。
複数の回転ずしチェーンはとこうした迷惑行為について相次ぎ声明を出し、利用客が「大変不快な思いをなさってしまうことは大変遺憾」だとした上で、警察と相談しながら「厳正に対処」する姿勢を示していた。一連の迷惑行為での逮捕は、今回が初めてとみられている。
日本は、清潔を徹底的に重視する衛生基準の高さや、食事エチケットで広く知られている。
それだけに、一連の「すしテロ」は国内で大勢にショックを与えただけでなく、回転寿司チェーン大手「スシロー」を展開する「あきんどスシロー」の株価が一時下落するなどの事態にもつながった。
愛知県警が逮捕した3人の標的となった「くら寿司」は声明で、「今回の逮捕をきっかけに、こうした、お客さまとの信頼関係に基づく仕組みを、根底から揺るがす迷惑行為が『犯罪』であるということが、広く世の中に認知され、今後、模倣犯がなくなることを切に願います」と述べた。
日本の飲食業界はすでに、世界のサプライチェーン危機や円安、ウクライナでの戦争、新型コロナウイルスのパンデミックの影響などで苦境にある。
多くのレストランが、こうした状況を受けて値上げに踏み切っている。
こうしたなか、一連の迷惑行為によって飲食店は、衛生面で顧客を安心させなくてはならない状況に置かれた。
中では、回転ずし店の最大の特徴で目玉ともいえる、回転レーンを停止するところも出ている。関東で展開する「すし銚子丸」では、共用のガリの箱からタバコの吸い殻が見つかったのを機に、しょうゆやわさび、湯飲みなどをあらかじめテーブルに置くのを中止し、客ごとに提供する方式に変更。さらに回転レーンを使った商品提供を終了し、タッチパネルを使う注文方式に切り替えると発表した。
1月に被害にあった「スシロー」は2月から、テーブルに備え付けの食器や調味料を取り換えるサービスを開始した。また、被害店舗と近隣店舗では、食器や調味料を客が自分でテーブルまで運ぶ方式がとられている。
くら寿司も今月初め、人工知能(AI)とカメラを使った監視システムを導入したと発表。回転レーンを流れる皿を不審な動きで戻した場合、埼玉県と大阪府にある本部に警告が送られ、店舗にも連絡が入るという。また、異常があった皿と、注文したテーブルも検知できるという。
同社の広報担当者は、こうした施策で顧客の不安解消と「回転寿司文化の存続を目指す」と説明した。