森ビルのシンクタンクである森記念財団都市戦略研究所(東京・港)は3日、国内の各都市が持つ特性を数値化した調査結果を初めて発表した。東京を除く主要72都市を対象に経済や文化など6分野のスコアを算出し、総合順位で1位は京都市だった。地方都市では人口減少や産業の衰退が懸念されている。各都市の強みと弱みを評価し、政策立案や企業活動などに役立ててもらう狙いだ。
調査名は「日本の都市特性評価」。政令指定都市と県庁所在地に加え、各都道府県で人口規模が上位の72都市を対象にした。統計資料に基づく83指標の定量データと居住者へのアンケートが材料となっている。「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通・アクセス」という6分野のスコアを算出し、合算して順位を付けた。
総合1位の京都市のスコアは1270.2。文化財の指定件数やイベント数、名物料理の数など「観光資源」という指標で強く「文化・交流」のスコアが1位だった。大学数や論文投稿数が最も多く「研究・開発」でも名古屋市に次ぐ2位だった。一方で合計特殊出生率や住宅のバリアフリー比率が低く「生活・居住」は33位となった。
2位は福岡市でスコアが1155.3。新設事業所の割合や特区制度認定地域の数といった「ビジネスの活力」の指標で強く「経済・ビジネス」が3位に入った。「文化・交流」や「交通・アクセス」も3位。一方でリサイクル率や再生可能エネルギー自給率の低さが弱みとなり「環境」の指標では57位に沈んだ。
3位の大阪市(スコア1131.8)は「経済・ビジネス」「交通・アクセス」それぞれが1位。「文化・交流」も2位だったが、「生活・居住」(71位)と「環境」(72位)が弱かった。4位の名古屋市(1104.5)は「研究・開発」が1位。「経済・ビジネス」と「交通・アクセス」がそれぞれ2位だったが、改善が必要な点は「環境」(67位)だった。
同研究所は2010年から世界の主要都市を評価する「世界の都市総合力ランキング」を発表している。今回は初めて国内の都市を対象にした。
総務省によれば17年10月時点の日本の総人口の推計は7年連続で減少した。地方都市では少子高齢化の傾向も特に強い。同財団は「何が悪いのか、どうすればいいのか。各都市で議論に進むことを期待する」(理事の市川宏雄・明大教授)と調査の狙いを説明している。日本の都市を対象とした詳しい調査は珍しい。需要が大きければ来年以降も続けるという。
あわせて東京23区を対象にした調査も公表した。総合1位の千代田区は「経済・ビジネス」で1位となり、その他の分野でも高い評価だった。「文化・交流」で1位だった港区は2位。総合3位の中央区は「生活・居住」「交通・アクセス」それぞれで1位だった。