日本のアイスが海外でも人気、訪日客が帰国後も買い求める…輸送費などコスト上乗せ「現地では高級アイスの部類」

各地で気温が上昇し、アイスクリームやかき氷がおいしい季節を迎えた。夏の定番スイーツは訪日客にも人気が高く、食品メーカー各社は需要を逃すまいと知恵を絞っている。(貝塚麟太郎) 【グラフ】拡大するアイス市場

夏場もクリーム系

スーパーのアイス売り場。記録的な暑さや値上げで市場規模は拡大している(千葉県四街道市で)

 静岡市駿河区では今月7日、全国で今年初めて40・0度を観測した。コンビニ大手ローソンによると、6~7日のアイスの売り上げは前週比で約5割増だったという。

 業界では、気温が高すぎると味わいの濃いクリーム系のアイスが敬遠され、氷菓が売れるとされてきた。近年はコロナ禍に加えて猛暑日が相次ぎ、外出機会が減っている。室内で過ごす時間が長くなったこともあり、夏場でもクリーム系商品が売れているという。

 こうした動きを受け、森永乳業は6~7月は氷菓系、8~9月はクリーム系に、それぞれ注力している。

 日本アイスクリーム協会が発表した2023年度の販売額は、前年度比9・9%増の6082億円だった。記録的な猛暑に商品の値上げが重なり、4年続けて過去最高を更新した。

 市場規模拡大の背景には、メーカーの需要予測の精度が上がっていることもある。森永製菓は17年以降、日本気象協会から提供された気象予測のデータを基に製造計画を立てている。需要の急変による欠品などを防ぐ目的があり、広報担当者は「梅雨明けなど一気に気温が上がると需要も伸びる傾向にある。タイミングを逃さないことが大事」と話す。

国内価格の2倍

 日本のアイスは、アジアを中心に海外でも人気を集めている。財務省の貿易統計によると、23年の輸出額は前年比23・5%増の79億円で過去最高を記録した。輸出量は19・8%増の1万138トンで、このうち台湾と香港、中国の上位3か国・地域向けが合わせて6割を超える。

 メーカーなどによると、輸出の伸びには訪日客が影響しているようだ。味や形で様々な商品があり、小豆や抹茶といった和風の商品は根強い人気がある。旅行者が帰国後も日本の味を求めることから、現地の小売業者が輸入を増やしているとみられる。

台湾などに輸出している明治の「エッセル スーパーカップ」は、国内に比べて2倍程度の価格で販売されている。アイスの輸出には冷凍設備を備えた船を利用するため、輸送費などのコストが上乗せされるためだ。「現地では高級アイスの部類」(広報担当者)だが、人気は高いという。

 人口減で国内市場の頭打ちが予想される中、旺盛な海外需要をにらんで販路開拓を進めるメーカーも出てきそうだ。

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