ローマには、2000年以上前に建築された集合住宅が、今も「現役」としてその役割を果たしている。パリにはナポレオン時代に建てられたアパートに今も人が住む。
ちなみに、日本でマンションについて定めた区分所有法の淵源は、ナポレオン法典の「共有」概念に行き尽くらしい。
パリの築200年アパートは、100年後もおそらくアパートとして機能しているだろう。だからナポレオン法典の「共有」概念は、今も100年後も立派に機能しているはずだ。
しかし、今の日本のマンションの100年後は、ほとんどないか、廃虚になっているか、建て替えられているかのいずれかである。
ローマやパリと違って日本のマンションは100年でほぼ命脈が尽きる。なぜか。
理由は、建物の構造にある。ローマやパリの集合住宅は、基本が石造。パリには煉瓦造りもあるだろう。しかし、日本のマンションは鉄筋コンクリート造(RC)である。
石や煉瓦はあまり経年変化しない。雨に打たれても風にさらされても、表面が少し変わるくらい。これに対して、鉄筋の周りをコンクリートで固めたRCは、かなり脆弱だ。
まず、鉄が酸化する。簡単に言えば、さびるのだ。さびると、容積が膨らむ。そして周りのコンクリートに亀裂を生じさせる。その裂け目から雨がしみ込むと、さらに酸化が加速する。
RC構造の軸になっている鉄筋が酸化して、コンクリートが亀裂だらけになると、建物の構造が脆弱になり、やがては人が住めないくらい危険な状態になる。
建物を細かくメンテナンスすることで、RC構造の耐用年数を伸ばすことは可能だ。しかし、それにも限界がある。100年耐えられても、200年は無理そうだ。
つまり、区分所有のマンションというのは、いずれ必ず「終わり」の時を迎える。その時にどうするのか。
今の区分所有法では、区分所有者の5分の4が決議した上で、建物を取り壊すか建て直すか、そのどちらかの選択になる。いずれにせよ多大な費用が掛かる。それは基本的に区分所有者の負担になる。
マンションが建て替えられるのは、容積率に余裕があって住戸数を増やせる場合に限られる。それも、増やした住戸が確実に売れる都心やその周辺の立地のみ。郊外の物件が建て替えられることは、まずないと考えるべきだ。そして、多くのマンションは郊外にある。
今のままでは、区分所有のマンションはほとんどが廃虚化するしかなくなる。これが社会問題となる日は近い。今から対策を考えるべきだ。